研究課題/領域番号 |
13J10843
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
橋詰 祥伍 東京大学, 大学院薬学系研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 酸化反応 / 炭素-水素結合活性化 / 天然物合成 / 酸化カップリング |
研究概要 |
研究計画書に記した通り、分子状酸素を酸化剤とする酸化的sp3炭素-水素結合活性化触媒の開発に取り掛かった。申請時から採用開始時までに、私は1電子レドックス活性リガンドとしてヒドロキノン誘導体を設計・合成し、鉄触媒と組み合わせることでベンジル位sp3炭素-水素結合酸化が促進されることを見出していた。これをより活性の高い触媒系へ発展させることを目指した。 まず、誘導体化による活性向上を狙った。同様の酸化還元挙動を示すと期待される誘導体を種々設計・合成し当酸化反応に適用したが、いずれも有望な結果を与えなかった。この結果と反応が示した顕著な溶媒依存性から、ヒドロキノンではなく溶媒として用いていたアミドが酸化反応の活性の鍵となっていると推測された。そこで当初の設計を変更し、アミドを触媒に組み込むことでこのsp3炭素-水素結合酸化反応を触媒できないかと考えた。種々の検討から、アミド-アセチルアセトナート共役型リガンドにより酸化反応は促進されたが、触媒当量以上は進行しなかった。以上の検討から触媒化を断念したが、アミドと酸素から酸化的sp3炭素-水素結合活性化の活性種が生じるという新規の知見を得ることができた。 また、sp3炭素-水素結合活性化型酸化カップリング反応を天然物合成に適用し、その有用性を示す研究にも取り掛かった。研究計画書に記した天然物とは異なるが、化合物自体の新規性がより高くまた方法論の有用性をより強くアピールできると考えられる、indozamycin類の合成を行うことにした。ターゲット化合物及び標的鍵反応は当初の計画と異なるが、酸化的sp3炭素-水素結合活性化を経るフラグメントカップリングによる収束的合成という概念は同じである。 私は目的物の3つの炭素-炭素結合を酸化カップリングにより構築する合成経路を計画した。単純2環性メソ体エーテルのTHF環α位炭素-水素結合を酸化して得られるラクトールに対し、モデル求核剤を用いて検討を行った結果、異なる反応条件に付すことで逆の立体を持つ生成物を作り分けることに成功した。現在は目的骨格に相当する求核種への適用を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
キノンと酸化還元活性を持つ金属を触媒として用いたプロジェクトでは、狙ったほどの酸化活性は認められなかったものの、アミドの新たなレドックス活性触媒への展開を示唆する基礎データを得ることができた。また申請書に記載したものとは異なるが、抗腫瘍活性天然物の全合成研究を、方法論開発を出発点として開始した。すでに興味深い反応も見出しつつあり、今後当コンセプトに沿って合成を進めることができると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、indozamycin類の合成研究を行う予定である。現在検討中である、最初の鍵反応の目的骨格に相当する求核種への適用を達成したのち、次の鍵反応を検討予定である。これが達成されれば、全合成達成に際して残る課題は、側鎖部分の導入と細かな官能基変換のみであるので、当合成戦略による全合成の達成が期待される。
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