研究概要 |
従来のいじめに関する研究では、いじめの集団における生起という特徴が反映された量的な研究は少なく、主に加害者の攻撃性や情緒的共感性などの個人差が扱われてきた。一方、社会心理学の分野で検討されてきたオストラシズムという現象がある。オストラシズムとは、個人や集団によって社会的に排除や無視されることである。オストラシズムに遭遇した際に、人がどのような行動をとるかどうかを検討することで、いじめの集団的な性質について検討することが可能となる。そこで、本研究は、オストラシズムの実験パラダイム(Williams, 2009)を元に、オストラシズムに遭遇した人物の行動及び感情への影響を検討した。 本年度は、本研究の一環として実験1を実施した。実験1では、女子大学生を対象に、5人で行うボールトスゲームにおいて、1人が仲間外れにされるかどうか(オストラシズムの有無)、及び集団の要因として試行の後の凝集性の高低(2)×対人相互作用の予期の有無(2)の3要因被験者間計画であった。その結果、オストラシズムの主効果が有意に見られ、オストラシズムに遭遇した場合、オストラシズムに加担しないという結果が見られた。そして、対人相互作用の予期との交互作用が傾向差で見られ、期待がある場合のほうが被害者を助けなかった。また、参加者の感情に与える影響としては、小川ら(2000)を用いて、事前事後の感情を測定したところ、オストラシズムが安静状態を傾向差で低下させたが、肯定的感情と否定的感情には影響を及ぼさなかった。オストラシズムの被害を受けることについては、自動的な処理が行われ、ネガティブな感情が引き起こされることが指摘されているが(Williams, 2009)、オストラシズムへの加担ではこのような結果は見られなかった。引き続き、どのような状況が加担につながるかを検討する。
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