研究課題/領域番号 |
13J10856
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田中 智輝 東京大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ハンナ・アレント / シティズンシップ教育 / ジャック・ランシエール / 政治的リテラシー |
研究実績の概要 |
本研究は、今日の公共性に関する議論に豊かな視座を与えたハンナ・アレントの教育論に着目し、彼女の教育論を公共性論の文脈を踏まえて解釈することを通して、シティズンシップ教育学等の公共性をめぐる今日の議論に新たな視座を与えることを目的とするものである。 二年目にあたる本年度の研究においては、一昨年度の研究を踏まえて、アレントが教育を「新しいもの」の到来とどのように関連づけているのかについての検討を行った。その際、ベンヤミンについてのアレントの論稿を手がかりとし、彼女の独自の時間論を明らかにすることを通して先述の課題に取り組んだ。こうした研究の成果をもとに教育哲学会にて研究発表を行った。 さらに、既存の「世界」あるいはすでに共有されている規範・秩序へとも「新しいもの」がもたらされることがいかなる政治的意義を有するのかについても検討を試みた。検討に際しては、アレントおよびジャック・ランシエールの政治論を手がかりとし、そうして得られた研究成果を日本教育学会にて発表した。 以上のような研究は主に政治哲学、教育哲学の領野において課題設定を行い、検討を試みたものであった。本年度においては、こうした研究を踏まえて、より実践的な問題圏への考察も試みた。考察に際しては、シティズンシップ教育において理論的、実践的な争点となってきた「政治的リテラシー」の概念の捉え直しを中心的な課題とした。こうした研究の成果をもとに、日本社会科教育学会において研究報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、前年度の研究成果を踏まえてH.アレントに関する研究を中心とした1件の学会発表を行なうとともに、ヴァルター・ベンヤミン、マルティン・ハイデガー、ジャック・ランシエールとの思想的関係を問う研究にも着手することによってより発展的な研究を行うことができた。また、シティズンシップ教育の実践家とともに共同研究に取り組むことによって、教育哲学、教科教育学、そして教育実践を架橋する研究を進めることができた。これらの研究成果は、アレントを中心とした政治思想がもつ教育学的意義を明らかとするものとなっており順調に研究成果を挙げることができている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度においては、思想史的な視点からアレントの政治思想を捉えなおすことに着手したが、今後このような検討を進めることを通じて、政治と芸術や制作、さらには芸術作品や制作物との関わりを明らかにすることを試みる。さらに、こうした研究と通じて、教師論や教材論へのインプリケーションを示すことも課題としたい。
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