研究課題/領域番号 |
13J10877
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
正直 花奈子 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 窒化物半導体 / 結晶成長 / エピタキシャル成長 / 有機金属気相エピタキシャル成長 / InGaN / MOVPE |
研究実績の概要 |
窒化物半導体は、(i)全可視光域をカバーするバンドギャップエネルギー、(ii)室温でも安定な励起子の二つの特性を有する。本研究の大目的である集積化が可能な窒化物半導体の新規共振器構造を用いて量子光学的事象発現の実証を達成するためには、上記の両方を活かす結晶成長技術と素子構造作製技術が必須である。 本年度は、主に(i)の特性を発揮する結晶成長技術の確立と(i)の特性を活かしたデバイス実証を行った。具体的には、有機金属気相エピタキシャル法(MOVPE法)を用いて、窒化ガリウム(GaN)と窒化インジウム(InN)の混晶である窒化インジウムガリウム(InGaN)の結晶成長を行った。この際、結晶成長の面方位としてN極性(000-1)(-c面)を選択し、1.MOVPE成長-c面InGaN/GaN多重量子井戸(MQW)構造の成長条件最適化、および2.-c面InGaN/GaN MQW発光ダイオード(LED)の動作実証を行った。具体的には前年度の研究結果を元に1.では、InGaN/GaN MQW構造成長のGaNバリア層への水素ガスの導入に加えて、意図的にInGaN井戸層とGaNバリア層それぞれに異なるアンモニア流量を設定することで異なるV/III比を設定した。この結果、前年度の問題となった準安定相の混在を実現しつつ比較的平坦かつ高InNモル分率のInGaN/GaN MQWs構造の成長を実現した。このMQW構造を活性層として、-c面InGaN/GaN MQW LEDの作製を行った。この結果、2.において、MOVPE法を用いて初めて-c面InGaN/GaN MQW LEDによる赤から青までの可視光全域波長での発光の実証に成功した。 今後、p型GaN層の正孔濃度を向上させることで、LEDの発光効率の向上を行う。また、-c面の組成むらと発光機構の原因を解明することを目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
集積化が可能な窒化物半導体新規共振器構造を用いて量子光学的事象発現の実証を大きな目標として掲げ、本年度はその励起光源として、広い範囲での波長選択が可能なInGaNの特性を-c面という新規の面方位を用いることで充分に実証することができた。具体的には、初めて-c面InGaNを用いて赤から青色までの発光を有するLEDを実現した。これらの成果により応用物理学会講演奨励賞を始め5つの賞を受賞している。また、発光の狭線幅化につながる平坦な-c面InGaN/GaN MQW構造の成長技術の確立も行っており、おおむね順調に研究が進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、本年度行ったMOVPE成長-c面InGaN光学素子による全可視光域での波長発光の実証に続き、その発光効率向上のための-c面p型GaNの正孔濃度の改善を行う。また、初年度に明らかにしたMOVPE成長-c面InGaN成長におけるc面サファイア基板微傾斜角のInNモル分率への影響より、ステップ端におけるIn取り込みによる発光線幅の広がりが問題であることがわかったため、これの原因となるGaNテンプレート表面のステップバンチングの問題を解決し発光の狭線幅化を試みる予定である。
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備考 |
松岡研HP http://www.matsuoka-lab.imr.tohoku.ac.jp/?TOPPAGE
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