研究課題/領域番号 |
13J10897
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研究機関 | 豊田工業大学 |
研究代表者 |
鈴木 誠也 豊田工業大学, 大学院工学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | グラフェン / 電界効果トランジスタ / 化学気相成長 / ドーピング / シリコンモノオキサイド / 誘電体 |
研究概要 |
研究の基盤となるグラフェンの合成では、プロセス最適化をはかると共に、化学気相成長(CVD)における基板表面のミクロ構造や合成条件を探索した。その結果0.6ミリという大面積かつ高品質のグラフェン成長に成功し、デバイス作製に必要となる高品質グラフェンの合成法を確立した。また、合成前に銅基板を高圧(約3気圧)でアニールするとステップテラス表面が形成され、この表面形態がグラフェン大面積化に重要な核生成の抑制に重要であることを初めて明らかにした。 研究課題名前半の「グラフェンの誘電体被膜」に関して、シリコンモノオキサイド(SiO)の真空蒸着によりグラフェン上へ欠陥を導入することなく誘電体被膜を形成することに成功し、「ドーピング制御」の基礎となるグラフェンの誘電体被膜プロセスを確立した。同様のSiO_2の電子ビーム蒸着による誘電体被覆では、グラフェンへ欠陥が導入されることから、SiOの真空蒸着プロセスの優位性を明らかにした。また、SiOで被覆したグラフェンがUV-オゾン処理や大気中加熱(5000℃)に耐性を示し、SiO膜がデバイス応用上有効な保護膜の役割を有することを示した。 研究課題名の中央部の「ドーピング制御」については、転写CVDグラフェンを用いたデバイスの作製と電気特性評価を検討し、基礎特性の解析手法を確立した。得られた電気特性の解析結果から、転写したCVDグラフェンのキャリア易動度、フェルミレベル(ドーピング量)を見積もった。また、電気特性評価では真空中での測定が必須であることを示した。今後は、今回確立した手法を用いて、研究課題名の後半部の「光学素子」を視野に入れた応用研究へ展開する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はグラフェン合成、誘電体被覆、デバイス作製及び電気特性評価等の研究の基礎部分を固めることに成功した。また改善点も見出したので、今後、研究課題名後半部の「ドーピング制御」、「光学素子」へとスムーズに展開できると考える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度確立したグラフェン合成、誘電体被覆、デバイス作製及び電気特性評価を基本指針として、シリコンモノオキサイドによるドーピング制御と光学素子応用へ展開していく。ただし、電気特性評価で得られたグラフェン電子易動度には改善の余地があるため、主にグラフェン転写プロセスについての見直しを行う。具体的には転写時に用いているサポート層の種類や除去法の再検討・改善を行う。また、電気特性評価では当初予定していなかった真空中での測定が必須となったため、4端子ゲートデバイスの測定に必要な電流導入端子や測定環境を整備する。
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