研究の基盤となるグラフェンの合成では、化学気相成長中に故意に大気を導入するというアイディアで、直径2.5 mmという世界レベルのサイズで、かつ高結晶性の単結晶成長に成功した。また、大気導入が合成段階のどのプロセスで有効に働くかを詳細に調べ、酸素分子の効果を含めたメカニズムに関する提案を行った。 この高結晶性の単結晶グラフェンを用いて、誘電体被覆を行った。誘電体被覆にはシリコンモノオキサイド(SiO)の真空蒸着を用いており、前年度の結果でグラフェンへ欠陥が導入されないことを確認している。 ドーピング量の計測にはグラフェン電界効果トランジスタ(FET)の電気計測を用いた。通常のリソグラフィを用いたデバイス作製ではレジスト残渣によるドーピングの影響が排除出来ないため、シャドウマスク(穴径:45 μm、間隔125 μm)を用いたNiの真空蒸着による電極のパターニングを行った。また、大気中の吸着分子の影響を排除するため、電子顕微鏡中で作動するナノプローバーを用いて真空中での電気計測を行い、再現性良いFET測定を実現した。 電気計測の結果、SiOx膜 (屈折率~2.0) をグラフェン上に形成することで約5V (SiO2ゲート酸化膜90 nm)のnドープが起こることを電気計測により明らかにした。 蒸着レートによるSiOx膜の組成(SiとO)制御が出来ることは屈折率測定により確認しているが、組成制御によるドープ制御が今後の課題である。
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