本年度は側鎖を有するイソインドリン誘導体およびジアミン誘導体を 1対 1 で反応させる事で汎用溶媒に可溶な新規近赤外色素の合成をおこなった。その結果収率よく目的の化合物が得られることがわかった。次に得られた化合物に対して電気的及び化学的に 2 電子酸化を行った。その結果、酸化する前のヘミポルフィラジンの吸収スペクトルは紫外可視領域に吸収を有していたが、酸化後は近赤外領域に吸収を有することがわかった。また、TDDFT 法を用いた理論計算で得られた最適化構造および理論スペクトルと比較すると、実測のデータをうまく再現できることがしめされた。一方で偶然にもアラインの重合反応が進行することを見いだした。アラインは有機化学における最も古い高反応性中間体のうちの一つとして知られています。その存在は 1902 年から認識され、環内の三重結合は通常の三重結合よりも大きく歪んでおり、その最低空軌道 (LUMO) のエネルギー準位は極めて低いことから、これまでに求核付加反応や付加環化反応、金属触媒による環化反応、シグマ結合切断に基づいた挿入反応など多くの反応が開発されています。これらの反応は天然物の全合成における骨格形成反応や結合形成反応などに展開されています。しかしその発見から 100 年以上経過した現在においてもアラインの重合反応は未だに達成されていませんでした。本研究では一価の銅存在下でその重合反応が円滑に進行することを見いだしました。
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