研究課題/領域番号 |
13J10932
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
山中 謙太 東北大学, 金属材料研究所, 特別研究員(PD)
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キーワード | 構造・機能材料 / 組織制御工学 / ナノ析出物 / 力学特性 |
研究概要 |
平成25年度はN添加したCo-Cr-Mo (CCM)合金の組織および引張特性について基礎的に調査した。主な成果は以下の通り。 1. 透過電子顕微鏡を用いてN添加したCCM合金の組織を詳細に観察し、母相である_Y相内に窒化物がナノスケール(<10nm)かつ均一に分散していることを初めて見出した。このナノ窒化物の結晶構造は主にCr_2Nであり、熱力学的に予想される相分解であるが、Cr_2Nの析出に先立ち、準安定相としてCrNが_Y相と整合して析出することがわかった。Co-29Cr-6Mo合金では0.1mass%以上のN添加により高温からの冷却中に起こる非熱的マルテンサイト変態が完全に抑制されるが、N添加による_Y相安定化メカニズムをShockley部分転位とナノ窒化物の相互作用に着目して明らかにした。 2. 引張特性のN添加量依存性について調査し、CCM合金の0.2%耐力がN添加量に対して線形的に増加することを明らかにした。また、その強化メカニズムについて、上記のナノ窒化物の形成と関連付けて考察した。一方、破断伸びはN添加により非熱的マルテンサイト変態が抑制され、_Y相が安定化するのに伴って著しく改善したが、高N組成ではわずかに低下し、結果としてN添加量が0.1mass%付近で最大となることを明らかにした。 3. 熱間加工温度(>1000℃)におけるN添加に起因した組織変化についても研究を展開し、ナノ窒化物の形成により熱間加工後の静的再結晶が抑制され、動的再結晶により形成した平均結晶粒径1μm以下の超微細粒組織が維持されることを見出した。 上記の研究成果について、アメリカで行われた国際会議(Thermec 2013)において招待講演を行った。また、TMS 2014(アメリカ鉱物金属材料学会)、国際ワークショップ、日本金属学会講演大会で口頭発表を行うとともに、学術雑誌に論文を投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ナノヘテロ構造の形成メカニズムの解明や力学特性の影響について一定の成果が得られ、論文発表や学会発表を多数行った。また、N添加による加工組織の安定化やN添加合金の相分解挙動など、当初予定していなかった研究成果も得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は小角散乱等を用いてより定量的な解析を行うとともに、透過電子顕微鏡を用いたより詳細な解析やナノスケールでの元素分配について明らかにする。
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