研究課題
本研究の目的は、ホスファチジルセリンがリサイクリングエンドソームという細胞内小器官の細胞質側の膜に豊富に存在する機構を解明することであった。現在までに、ATP8A1というホスファチジルセリンフリッパーゼ(酵素の1種)がホスファチジルセリンをリサイクリングエンドソームの細胞質側に局在させるのに必要であるということを見出しており、研究の目的の最も主要な部分は達成されている。さらに、ATP8A1によるホスファチジルセリンの局在制御が、EHD1という分子の局在を制御することによって、リサイクリングエンドソームからの膜輸送を制御するということも見出している。現時点でまだ残る課題として、ATP8A1の活性がどのように制御されているかというものがある。この課題は、今後1年間で解決していけると考えている。当初の計画を超えて、ATP8A2というフリッパーゼがATP8A1と同様の役割を持つこと、ATP8A2の遺伝子変異による遺伝病の発症が、リサイクリングエンドソームからの膜輸送の破綻に起因することを示唆する結果も得ている。これらの結果は、既にヨーロッパ分子生物学会誌(EMBO Journal)上にオープンアクセスで発表している。以上の結果は、ホスファチジルセリンの局在化機構を示すのみならず、ホスファチジルセリンの生理的意義も示すものとして重要である。フリッパーゼの遺伝子変異による遺伝病は多数報告されているが、その発症メカニズムはほとんど不明のままである。本研究を端緒として、フリッパーゼ変異による遺伝病の発症メカニズムの解明に繋がることが期待される。
2: おおむね順調に進展している
当初の目的通り、ホスファチジルセリンが細胞内小器官(リサイクリングエンドソーム)の細胞質側の膜に豊富に存在するのに必要な遺伝子を見出している。さらに、ホスファチジルセリンのそのような局在制御によって制御される細胞内の現象も見出している。
ホスファチジルセリンを制御するフリッパーゼATP8A1の活性を制御するメカニズムについては、まだ不明な点が残されている。このメカニズムを解明するにあたり、ATP8A1に対するキナーゼによるリン酸化の既報に着目し、リン酸化を受け得るアミノ酸がATP8A1の機能に必須かを検証していく。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件)
The EMBO Journal
巻: 34 ページ: 669-688
10.15252/embj.201489703.
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