研究課題
結晶シリコン(Si)太陽電池の高効率化を達成する為には、絶縁膜/Si界面の制御および絶縁膜中の物性を詳細に調査することが重要である。本研究では、絶縁膜中の固定電荷に着目し、起源の解明ならびに制御を試みる。現在の結晶Si太陽電池は基板が薄型化され、表面の影響が支配的になることが問題となっている。そこで、上述したようにSi表面を絶縁膜で被覆するパッシベーション膜を用いることが高効率化に対する重要な技術に位置付けられている。膜中固定電荷の起源を解明することにより、Si中のキャリアとなる電子およびホールをSi表面から分散させ、キャリアの損失となる再結合を抑制する機構へと応用する。このキャリア再結合を抑制する機構は、膜中固定電荷により誘起される電界を用いることから電界効果パッシベーションと呼称され、極限結晶Si太陽電池を実現させるために世界中の研究機関により材料・プロセスといった実太陽電池デバイスに応用をする研究がなされている。本研究では、新規パッシベーション膜材料を探索する事を目的とし、膜中固定電荷の発生の起源について調査する。また、単一材料から複合混晶材料に拡張し、固定電荷を効率よく利用する新規構造も新たに提唱をする。これらが達成されることにより、現在の太陽電池開発における高効率化が停滞している問題において、ブレイクスルーとなる材料技術を確立する。本研究は、太陽電池デバイスのみに関わらず、集積回路(LSI)にも拡張をし得る技術であり、双方向からのアプローチを実現していることも大きな特徴である。
2: おおむね順調に進展している
高固定電荷密度を有する新材料の探索から、パッシベーション膜の積層構造の検討を行った。積層構造にすることにより、固定電荷が誘起する電界の効果を効率的に利用することを目的としている。成果としては、アルミナ/固定電荷層を作製し、表面再結合速度30cm/sと実デバイス応用可能な結果が得られた。また、Si/アルミナ界面制御を検討事項とし、放射光を用いた特色ある評価手法により、バンド構造に関する議論を行った。これにより、固定電荷の実効的な効果を定量的に議論が可能であると考える。
積層構造(アルミナ/固定電荷層)のパッシベーション特性および有用性を実験的に明らかにした。これまでの実験結果を基に、実デバイスへ応用させるべく、プロセスを考慮した開発を行う。検討事項と事項として、①セル構造、②成膜条件、③電極形成プロセス、の3点が挙げられる。この中で、①、②に関しては実験目的に述べたとおり決定している。ここでは、③電極形成プロセスに関して懸念である、パッシベーション膜を通じてのコンタクトに関して検討し、レーザアブレーションによるコンタクトホール形成によるプロセスを想定している。従って、本年度では、現在まで材料探索、新規構造開発を経た成果を実デバイス作製により完結させる。
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