研究実績の概要 |
酸化ストレスの亢進は、疾患の増悪を促進する有害な因子となる。一方で、申請者は酸化ストレスにより産生誘導されるIL-11が組織修復を促進因子であることを見出していた。本研究では、酸化ストレスにより誘導されるIL-11の発現制御と生体の恒常性維持における役割を明らかにすることを目的とし、2年度目は特に、(1) 親電子分子によって誘導されるIL-11の生体での役割 (2) 病態モデルマウスを用いたIL-11レポーターマウスの有用性の検討を研究課題とした。
(1)親電子物質は、活性酸素種と同様のタンパク質修飾を介して様々な生体応答を誘導することが知られている。そして、親電子物質の一つである1,2-naphthoquinone (1,2-NQ)刺激によりIL-11の有意な産生亢進が見られることを申請者は見出していた。そして今年度、IL-11受容体欠損マウスを用いて解析を進めた結果、IL-11は1,2-NQ投与により生じる毒性に対して抵抗性を示す分子であることが分かった。また、この際に野生型マウスでは腸上皮で細胞増殖などの亢進が見られるが、この現象はIL-11受容体欠損マウスでは減弱していることを見出した。現在、IL-11の下流でこれらの機構に関わる分子経路の同定を試みている。
(2) 初年度に、申請者はIL-11-GFPレポーターマウスの作製を行った。そこで、このマウスの有用性を検討するために、酸化ストレスの亢進が見られる肝障害モデルを作製し、検討を行った。その結果、肝臓においてIL-11遺伝子およびEGFP遺伝子の発現亢進が見られた。しかし、この系では細胞質の損失を伴う細胞死が短時間で起こってしまうため、細胞質に現れるEGFPタンパク質を指標とした解析が難しいことが分かった。そこで、今後はより長期的な経過観察が可能な酸化ストレスが病態に関与する疾患モデルを用いて解析を行うこととした。
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