本研究課題では当初、後発国も含めた女性の就労パターンの変化を、多変量を用いた計量分析でマクロとミクロ両方のデータを用い明らかにする計画であったが、現段階では記述的な分析をより丁寧に行い本研究の基礎となる成果を挙げることに注力した。 まず国レベルの分析については、昨年度の分析結果に学歴要因を考慮した追加的分析を行った。結果、台湾では高学歴女性の就労パターンは比較的逆U字型に近いかたちで推移していた。さらに、台湾の典型とされてきた「くちばし型」といわれる曲線は、主に中等教育程度の女性において一貫してみられるものであった。以上より、台湾では学歴による結婚・出産による離職の差異が一貫して顕著であり、特に経済成長期に高学歴女性における専業主婦化が生じてこなかったことが明らかになった。これは、日本では高学歴女性の場合結婚・出産で離職したあと中年期の再就労が抑えられがちな「きりん型」で推移してきたのと大きく異なる点である。 個人レベルの分析については、台湾に関してthe Panel Study of Family Dynamicsデータを用いた女性の離転職についてのイベントヒストリー分析を行い、ISA World Congress of Sociologyの2014年横浜大会において報告した。台湾では、小規模企業に従事しているとより離職しにくいが、転職自体は小規模企業間で最も盛んに生じているというものであった。離職しにくさについては、小規模企業ほど柔軟な就業が行い易いという観点から解釈を行った。以上に加え、採用前に分析していた課題の関連研究である性別役割規範に関する日韓台比較研究の論文をInternational Journal of Japanese Sociologyに投稿し掲載が決定している。
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