研究課題/領域番号 |
13J10998
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
山田 裕明 大阪府立大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 強誘電体 / 極性半導体 / 分極間相互作用 |
研究概要 |
本研究は巨大な分極を有する強誘電体と自発分極を有する半導体である極性半導体のヘテロ接合界面において分極が生じる電気的な効果に着目しており、分極間相互作用を利用した量子構造デバイスの開発指針を与えることを目的としている。当該年度では極性半導体ZnOと有機強誘電体ポリフッ化ビニリデン-三フッ化エチレン共重合体(P(VDF-TrFE))を用いたヘテロ構造を作製し、極性半導体の自発分極が電気的特性に生じる効果に着目し、研究を行った。 ZnおよびO極性ZnO基板に対してスピンコート法によりP(VDF-TrFE)を積層し作製した試料は分極-電圧特性において強誘電分極の反転挙動が確認でき、P(VDF-TrFE)とZnOの自発分極が共存し、分極間相互作用の発現が期待できる。静電容量-電圧特性においてO面試料はZnOの空乏化に起因する静電容量の減少が確認できる一方で、Zn面試料では静電容量の減少がほとんど生じておらず、界面キャリアに変化を生じている可能性が示唆された。X線光電子分光法による界面バンド評価では極性による接合状態の変化は有意に見られなかったが、P(VDF-TrFE)とZnOは大きなバンドオフセットを有するType-II型のバンド構造を有することが明らかになった。さらに熱刺激電流測定からP(VDF=TrFE)界面には分極量に相当する多量の欠陥の存在が明らかとなり、電気特性の変化にはZnOの分極による電荷バランスの変化に特徴的なバンド界面、多量の欠陥が影響することで生じていることがわかった。 以上の結果は異種分極界面において極性半導体の分極により界面の電荷バランスに変化を生じることを示唆しており、分極間相互作用を利用したヘテロ接合界面のキャリアダイナミクスの解明に進展に寄与するものであると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
熱相互拡散を低減し、良好な界面を形成するため強誘電体層として適応したP(VDF-TrFE)に多量の欠陥が存在し、これにより相互分極の効果が打ち消され、本質的な界面での分極間相互作用を確認するに至れなかった。今後は格子整合系のヘテロ接合構造の形成を行い、欠陥の寄与を低減することでより本質的な分極界面の相互作用効果を解明する。
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今後の研究の推進方策 |
格子整合系の異種分極構造を形成し、欠陥の少ない界面を作製する。この構造の接合バンドや伝導特性、電気的特性から相互分極の効果を明らかにする。強誘電トンネリングなど近年強誘電体界面に対して報告される界面変調効果に着目し、分極により生じる界面のキャリアダイナミクスの解明を目指す。界面においては自発分極以外の寄与も大きく、分極の効果を詳細に議論するためには定量性を持った評価を行う必要がある。焦電性や圧電性を利用した強誘電特性評価と誘電特性、電気伝導特性など多面的なアプローチとそれを説明する理論的なアプローチが必要であると考えている。
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