初年度に引き続き、育児期の母親のネットワークの構造や規定要因、形成過程について理論研究、実証研究を行った。具体的には、以下3つの研究を進めた。 第1に、教育学としてどのようなアプローチでネットワークを捉えることが妥当かについて理論研究を行った。家族研究、都市社会学研究など、ネットワークに着目した先行研究を蒐集し、KJ法を用いてその知見を統合することで、適切なアプローチを導き出した。 第2に、現在、地域に存在するネットワークの構造やその規定要因について実証研究を行った。まず、社会教育行政を中心として、ネットワークの構築が積極的に進められている長野県飯田市を対象としたアンケート調査の分析を行った(調査は2013年度内に実施)。さらに、類似した事例として石川県河北郡内灘町を対象とした質的調査も実施した。これらの調査では、①住民間で社会関係資本の多寡はどの程度あるのか、②社会関係資本の形成に社会教育行政はどの程度寄与できるか、を研究課題として設定した。その結果、所得や学歴、職業の有無、学齢期の地域活動の経験等の変数が社会関係資本の多寡を規定していること、しかし公民館や自治体を拠点とした社会教育への参加によって社会関係資本を育むことができ、所得や学歴、職業等の影響力を希釈する効果があることが分かった。 第3に、ネットワークの形成過程について実証研究を行った。東京都渋谷区で活動する特定非営利活動法人シブヤ大学と対象とし、ネットワークが少なく孤立しがちな都市部で、シブヤ大学がいかなる手法でネットワークを築いているのかについて、インタビュー調査を行った。この研究から、都市部ではNPOが社会関係資本形成のための重要なアクターとなっていること、それらのNPOの多くは、単独で活動せず、行政、地縁団体、企業、など様々なステークホルダーと柔軟にパートナーシップを形成していることが明らかになった。
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