研究課題
①精巣における酸化ストレスによるアポトーシスの制御機構の解明1.Pgam5の精巣における発現の再検討:Pgam5抗体とミトコンドリア特異抗体COX4抗体との2重免疫染色で、ミトコンドリアに発現が集積していた。Pgam5の恒常発現した細胞株をレンチウイルスを使って作成した。Pgam5が細胞株で過剰発現していたが、アポトーシス系のタンパクである Bcl2系の転写やタンパク発現を調べたが、軽度の変化のみであった。使用細胞株の適正を含めた検討が必要であると考える。②TRA98 monoclonal抗体の抗原遺伝子(Nkapl)の精子幹細胞の複製・分化に与える影響1.抗原遺伝子(Nkapl)特異的抗体の作成:市販のNKAPL抗体を様々な条件検討を行って使用してきたが、マウスにおける内在性レベルのタンパクの検出には十分ではないことが判明したため、2種類のエピトープを作成し、NKAPL特異的抗体の作成を行った。2種類のうち1種類はマウスの抗原遺伝子への特異性の高い抗体であることがわかった。また精巣切片にこの抗体を用いて免疫染色をしたところ、Differentiating spermatogoniaとspermatocyteで発現を認めた。2.Germline Stem cell(GS)の培養確立とTRA98 monoclonal抗体の抗原遺伝子のノックアウトマウスの作成:ICR pupの精巣よりGS細胞を樹立し、NKAPLを発現するレンチウイルスを作成し、overexpressionさせたGS細胞株を作成した。この細胞株を検討すると増殖速度や形態学的には変化を認めなかったが、Notch signalingの下流遺伝子であるHes family 遺伝子の発現が有意に変化していた。またspermatogoniaの増殖因子や分化に関与する遺伝子群においても有意な変化を認めた。次に本遺伝子のノックアウトマウスの表現型を精査すると、精巣で典型的なMaturation arrestを示し、pachytene spermatocyteで著名なアポトーシスを認めた。精細胞の増殖因子や分化に関与する遺伝子群の変化に著名な変化を認めた。
2: おおむね順調に進展している
研究成果については、meiotic arrestを起こす新たなノックアウトマウスの系を確立し、さらにそのphenotypeの解析や分子レベルでの変化をNotch signaling pathwayに沿って解明し、論文を作成した。現時点では研究計画に沿って概ね予定通りに研究が進行していると考えられる。研究への取り組みに関してもこれまでの研究結果を十分に吟味し、考察を行ったうえで、綿密な計画を立て、懸命に取り組む予定である。
本研究にて確立したNkaplノックアウトマウスはApoptosisを伴うspermatocyteが非常に多く見られ、complete meiotic arrestを引き起こしていた。減数分裂は精細胞に特異的な現象であるが、そのメカニズムは非常に複雑で、分子レベルでは解明されていない部分が非常に多い。しかし本所見はNkapl遺伝子は減数分裂において必須であることを示唆している。これまでNkapl遺伝子の精細胞における働きに関してはわれわれの論文以外には報告されておらず、特に減数分裂への関与に関してはまったく不明である。そこで今後、このNkapl遺伝子ノックアウトマウスを使って、本遺伝子が減数分裂のどのステップでどういった異常が引き起こされることにより、アポトーシスやmeiotic arrestになるのかを詳細に解析する予定である。またChIP-seqやRNA-seqなどの最新の手技を用いて、Nkapl遺伝子のターゲットとなる遺伝子群やpathwayなどについても解明する予定としている。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件)
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