研究課題/領域番号 |
13J11037
|
研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
川島 一公 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 特別研究員(PD)
|
キーワード | 卵子 / 卵胞 / 体外培養 |
研究概要 |
平成25年度は、成熟卵子が排卵後、妊娠に至るまでに必須の黄体形成の分子メカニズムの解明と、体内でみられる卵胞発育における原始卵胞から二次卵胞までの、初期プロセスの体外培養系の再現に特化して研究を行い、①排卵期における顆粒膜細胞の黄体細胞分化の分化メカニズムの解明と、②卵巣組織由来細胞における卵胞発育の制御の2つの結果を得た。①は、これまで、卵胞内に存在する顆粒膜細胞がどのようなメカニズムで黄体化するかは不明であったことから、採用者は、顆粒膜細胞が、LH刺激後に細胞内でどのような分子機序が機能しているかを調べた。その結果、プロテアーゼのCalpainの活性が増加していることを発見し、その活性が顆粒膜細胞の黄体化に必須であることを示した。具体的には、マウスにおいて、LH刺激後5.5~9.5時間にみられるCalpain活性をCalpain抑制剤で抑制すると、顆粒膜細胞の黄体化が抑制されたことから、極めて限定的な期間にCalpainの活性が黄体化に重要な役割を果たしていることが明らかになった。②は、卵巣から採集した特異細胞を、ある条件下で培養し、培養上製を回収し、それを巣組織Conditioned medium (oCM)とし、卵胞に対する機能を卵胞培養系を用いて調べた。その結果、oCM添加によって、通常の卵胞培養でみられる、卵胞組織の崩壊が認められず、卵胞の構造を維持していた。これらの結果は、卵胞の組織化を卵巣がoSM中に含まれる、内分泌因子やECMで制御している可能性を示唆するものであり、本件の卵胞培養開発にとっても、注目すべき結果であった。さらに、oCMを添加した培養液に、原始卵胞から二次卵胞までそれぞれの卵胞を培養し、卵胞発育のサイズを計測したところ、それぞれの卵胞で、これまでに報告された培養法と比べて有意に発育サイズが大きかった。しかし、二次卵胞以降は、既報の手法のほうが有意に卵胞の成長を誘起していたことから、oCMは原始卵胞から二次卵胞までの卵胞発育にポジティブに関与し、二次卵胞以降は抑制しているという結果が得られた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
卵胞発育過程の初期にあたる原始卵胞、一次卵胞、二次卵胞までのプロセスにおいて、これまでどのようなメカニズムでそれらが発育するか不明な点が多かった。今回、申請者は、卵巣間質における特殊な細胞の存在を見出し、その細胞が卵胞初期における発育に関与していることを発見した。今年度は、これらの細胞が分泌する因子の同定を中心に研究を行うことが可能となり、計画通りに進んでいると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
上記に述べた卵巣内の特殊な細胞の機能と卵胞との関係を中心に研究を行う。分泌因子の解析にはITRAQ法を用い、有用因子の網羅的解析と、卵胞のマイクロアレイ解析によってカウンターパートになる因子を特定し、卵胞の発育に関与する因子を同定する。
|