本研究の目的は、中近世移行期力が村落や都市に及ぼした影響を、政治史・法制史・経済史の視点から総合的に把握し、当該期の社会変動の総体を明らかにすることである。 本年度は、16世紀中頃~17世紀中頃の史料(特に古文書および古記録)を収集しながら、近世社会形成に大きな役割を果たしたとされる豊臣政権の政治構造を主な検討対象とした。豊臣政権については、これまでも様々な研究蓄積がなされてきたが、各分野における成果が必ずしも有機的には結びつけられておらず、それらを含みこみながら、全体像の考察を行うことが求められている。 このような課題を解決するためには、まず政権の内部構造を解明する必要があり、本研究ではとりわけ政策の決定過程を重視している。その理由は、政権が社会との折衝を行う中で、様々な政治決定や政策の取捨選択を行っており、その過程を考察することで当該社会の特質を明らかにしうると考えられるからである。そしてその成果の一部を、「秀吉死後の豊臣政権」(『日本史研究』617号)として発表した。 この論文では、絶大な権力を有していた秀吉の没後、政権がどのように運営されたのかを明らかにするために、政権構成員の政務実態を検討した。その結果、秀吉の役割を分掌した「五大老」と「五奉行」の合議が異質なものであることを明らかにし、秀吉死後から関ヶ原合戦に至る政治史における従来の理解を改める事実を指摘した。 また、前後の時期の政務実態についても検討を重ねているが、その総括と公表は今後行っていく予定である。
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