研究課題/領域番号 |
13J11083
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
石田 拓也 九州大学, 工学府, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | プラズモン / 金ナノ粒子 / ポルフィリン / 疎水化 |
研究実績の概要 |
プラズモン誘起太陽電池の基礎となる疎水性金ナノ粒子(AuNP)の基板(電極)への固定化・組織化法の開発と、ポルフィリン連結型アルカンチオール誘導体修飾AuNP(PC10S-AuNP)の合成・解析に重点をおいて研究を進めた。まずオクタデカンチオール(ODT)、またはPC10Sによる比較的粒径の大きなAuNP(15-80 nm)の疎水化・機能化法の確立と、基板への固定化・組織化法の開発を並行して行った。クエン酸保護AuNP(cit-AuNP)をそれぞれ調製し、このcit-AuNPを極性有機溶媒中で、ODTと反応させて疎水化した。調製したODT-AuNPは、クロロホルム(CHCl3)中において、孤立分散状態で安定な粒子であった。FT-IR測定により、AuNP表面にODTの自己集合化単分子膜が形成されていることがわかった。このODT-AuNPをLangmuir-Blodgett(LB)法により、基板に固定化・組織化することに成功した。このODT-AuNP二次元アレイと色素を組み合わせたLB膜を作製し、蛍光測定を行った結果、プラズモンによる発光増強が観測された。 次に、PC10S-AuNP(粒径15-80 nm)の創製を行った。DMF溶液中でPC10SとAuNPを反応させることで、孤立分散状態で安定なPC10S-AuNPの合成に成功した。このように大きなサイズ、かつ孤立分散状態で有機溶媒に可溶な光機能性分子修飾AuNPは、これまで報告されたことがない。さらに、 PC10Sとオクタンチオール(OT)の比率の異なる混合溶液を調製し、この溶液中でAuNPを反応させた結果、ポルフィリンの吸着量制御にも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ポルフィリン連結型チオール誘導体(PC10S)で修飾された、有機溶媒中に孤立分散状態で安定な金ナノ粒子(PC10S-AuNP、粒径15-80 nm)の合成と基板への固定化・組織化を行った。これまでに報告されている光機能性分子修飾された疎水性AuNPの粒径は5 nm以下であるが、本研究においては最大80 nmまでのAuNPの修飾が実現できている。さらに、乾燥後、固体状態から有機溶媒に再分散可能であるという優れた安定性を有していることから、従来にない画期的な疎水化AuNPの創製に成功したと言える。基盤への固定化・組織化については、Langmuir-Blodgett法を用いて、粒径15-50 nmのオクタデカンチオール修飾AuNPの高密度な単粒子膜を基板に固定化することに成功した.この手法を確立したことで、プラズモン誘起太陽電池の基本となる半電池の作製技術を確立したことになる。 以上の結果から、光電変換への基礎的成果が得られ、研究は順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
LB法による基板への固定化・組織化する手法は確立できたので、プラズモン誘起太陽電池の基本となる半電池の作製と性能の評価を行う。ODT-AuNPにおいては、LB法を用いて色素と混合した膜を作製し、光電流測定を行う。また、この基板の蛍光寿命測定を行い、プラズモンによる蛍光増強・光電流増強機構の解明を試みる。PC10S-AuNPにおいては、まず色素(PC10S)の吸着量を制御し、蛍光X線と元素分析を用いて定量的に評価する。この粒子の寿命測定を行い、AuNP-色素間相互作用や色素間相互作用を調査した後、LB法により、基板への固定化・組織化を行う。この基板の光電流測定と蛍光測定を行い、プラズモンによる増強効果を調べる。プラズモンによる影響に関しては、粒径依存性や粒子密度依存性についても調べる。
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