研究概要 |
細胞外基質の一つTenascin-C (Tn-C)は、癌細胞の増殖、浸潤、転移に重要よ役割を菓たすたとが明らかとなっている。しかしこれまでの我々の研究で、イヌの乳腺癌では悪性度に関わらず豊富な発現が認められた。そこで、Tn-C蛋白の産生源となる細胞を同定するため、branched DNA技術を用いた高感度in situ hybridization法と免疫組織化学の二重染色を実施した。その結果、低悪性度のイヌの乳腺癌に発現するTn-C蛋白は筋上皮細胞が産生しており、一方で高悪性度の乳腺癌のTn-C蛋白は主に癌間質の筋線維芽細胞が産生していることが明らかになった。Tn-Cには複数のsplicing isoformが存在するため、これら産生源の異なるTn-C蛋白は違った種類のisoformであり、それぞれが別の機能を有している可能性がある。 そこで次に、4種類のヒト膵癌細胞株(PK-1, PK-45H, PK-8, PANC-1)、1種類のヒト膵癌間質線維芽細胞(ACBR-1)、4種類のヒトグリオーマ細胞株(YKG-1, T98G, A172, KG-1-C)において、選択的スプライシング領域を挟むように設計したプライマーによるReverse transcription PCR (RT-PCR)法を実施した。その結果、A172を除くすべての細胞株で、すくなくとも三本のバンドが検出された。PK-1のバンドについてシークエンス解析を行った結果、選択的スプライシング領域内のすべてのドメインが欠落したisoform、すべてのドメインが保持されたisoformに加えて、すべてのドメイン新たなドメインが挿入されたisoformが存在することが明らかになった。
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