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2014 年度 実績報告書

皮膚活性酸素種の新規計測法の開発と臨床応用

研究課題

研究課題/領域番号 13J11176
研究機関独立行政法人国立循環器病研究センター

研究代表者

神野 直哉  独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 特別研究員(PD)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワードヒドロキシルラジカル / 大気圧化学イオン化質量分析 / 抗酸化物質
研究実績の概要

平成25年度の研究成果より,大気圧イオン化質量分析(APCI-MS)を用いることでヒトの皮膚から放出されるヒドロキシルラジカル(OH)を直接計測可能であることを見出していた.平成26年度は,APCI-MSで得られるマススペクトルをさらに解析し,APCI-MSによるOH計測法の測定条件および解析手法の確立を行った.
皮膚ガスを計測して得られたマススペクトルより,m/z=17,35,53,71等のピークが得られたことから,ヒト皮膚から放出されるOHラジカルはOH単体だけではなく,水クラスターと結合した状態(OH(H2O)n)で放出されていることが推測できた.この事実を確証するために抗酸化作用を有するビタミンCまたはビタミンEの摂取前後で,皮膚からのOHラジカル放出量の変化を調査した.その結果,ビタミンCまたはビタミンEを摂取することで,m/z=35,53,71のピーク強度が減少した.このことから,皮膚から放出されているOHラジカルは水クラスターと結合して放出されていることが確認できた.なお,m/z=17のピーク強度に関しては,APCI-MS内で発生するOHラジカルも寄与しているためビタミンCおよびビタミンEの摂取による減少が見られなかった.
また,同様の実験として,OHラジカルを選択的に消去することが知られている水素ガスを吸入した際に皮膚から放出されるOHラジカルの変化量についても検討を行った.水素ガスを吸入した場合にもマススペクトルのm/z=53,71のピーク強度が減少した.
以上の結果より,皮膚から放出されるOHラジカルは水クラスターと結合していることが確認でき,またこれらのOHラジカルをAPCI-MSを用いて直接計測可能な手法を開発した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成26年度の研究成果により,皮膚から放出されるOHラジカルが水クラスターと結合していることを解明しており,それによってAPCI-MSを用いた新規皮膚活性酸素種の計測法の開発に一歩前進が見られた。また,抗酸化能を有するビタミンCやビタミンEの摂取実験および水素ガスの吸入実験を行うことで,それらの物質が確かにOHラジカルを消去していることを本研究で開発した皮膚活性酸素種計測法で証明した.
以上の結果が得られたことは,この計測法を臨床に応用するために重要な成果であり,本研究の目的の達成に大きく近づくものと考えられる.

今後の研究の推進方策

これまでの研究より,皮膚から放出されるOHラジカルが水クラスターと結合した状態で放出されていることが判明している.今後の研究では,OHラジカル放出のメカニズム解明およびレーザー誘起蛍光法(LIF)と組み合わせた定量システムの開発を行う.
皮膚から放出されるOHラジカルは,汗中の水分と結合していることが考えられるため,APCI-MSによる皮膚ガスと皮膚からの発汗量を同時に測定し,発汗量とOHラジカル放出量との関係を明らかにする.この際,汗中の水分はAPCI-MSによって得られるマススペクトルに影響を与えるため,APCI-MSと水分量の関係も事前に調査しておく.
APCI-MSを用いたOHラジカル測定法では,OHラジカルの定量が困難であるため,LIFを組み合わせたシステムを構築し,OHラジカルの定量を試みる.まず初めに,小型LIFの設計および評価を行い,その後にAPCI-MSと組み合わせて,皮膚ガス測定のための最適条件を検討・設定する.
構築したOHラジカル測定システムを用いて,抗酸化剤の摂取実験,水素ガス吸入実験等を通して,皮膚から放出されるOHラジカルの定量および生体内で生成されるOHラジカルの定量を試みる.

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2015 2014

すべて 学会発表 (4件)

  • [学会発表] 抗酸化物質の皮膚ヒドロキシルラジカル放出への効果2015

    • 著者名/発表者名
      神野直哉,蔡徳七,下内章人
    • 学会等名
      第5回分子状水素医学シンポジウム
    • 発表場所
      愛知県名古屋市
    • 年月日
      2015-03-21 – 2015-03-22
  • [学会発表] 大気圧イオン化質量分析法を用いた活性酸素種計測法の開発2014

    • 著者名/発表者名
      神野直哉,蔡徳七,下内章人
    • 学会等名
      日本分析化学会第63年会
    • 発表場所
      広島県東広島市
    • 年月日
      2014-09-17 – 2014-09-19
  • [学会発表] 大気圧イオン化質量分析装置を用いたOHラジカル直接計測法の開発2014

    • 著者名/発表者名
      神野直哉,蔡徳七,下内章人
    • 学会等名
      第67回 日本酸化ストレス学会学術集会
    • 発表場所
      京都府京都市
    • 年月日
      2014-09-04 – 2014-09-05
  • [学会発表] Development of Measurement Method of Hydroxyl Radicals from Breath and Skin Gases Using Atmospheric Pressure Ionization Mass Spectrometry2014

    • 著者名/発表者名
      神野直哉,蔡徳七,下内章人,白井幹康
    • 学会等名
      Breath Analysis 2014
    • 発表場所
      ポーランド,トルン
    • 年月日
      2014-07-06 – 2014-07-09

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公開日: 2016-06-01  

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