被子植物の受精において、花粉から伸びる花粉管細胞は複雑な雌しべ組織の中で迷うことなく、卵細胞のある微小な領域へと正確に誘導される。この花粉管ガイダンスという現象において、花粉管誘引物質LUREsは最も重要な雌側の鍵因子の1つである。本研究では、花粉管誘引物質群LUREsの受容体を同定するとともに、花粉管によるLUREsの受容・応答機構を解明することを目指している。25年度は、花粉管の回収方法やタンパク質の抽出方法を改良するとともに、質量分析機の選定を行なった。これにより、2939種類の花粉管タンパク質を同定し、同定数が従来の約2.6倍に向上した。また、花粉管の生理状態の変化によって、LUREとの結合能をもつステージと、もたないステージがあることに着目して、比較プロテオーム解析を行なった。この結果、LUREとの結合能をもつステージの花粉管において、1305種類のタンパク質で有意差があることを明らかにした。これらのうち、受容体様キナーゼにアノテーションされるタンパク質を複数同定した。これらを受容体候補タンパク質として、クローニングを行なった。さらに、結合能の異なるステージの花粉管を材料として、Hisタグ融合LUREを与えたのち、架橋剤を加えたものにっいてタンパク質を抽出し、Ni^<2+>ビーズを用いてプルダウンを行ない、LURE-受容体複合体を精製した。これらについて、質量分析を行なった結果、LUREとの結合能をもつステージの花粉管で、複数の受容体様キナーゼを同定した。
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