研究実績の概要 |
被子植物の受精において、花粉から伸びる花粉管細胞は複雑な雌しべ組織の中で迷うことなく、卵細胞のある微小な領域へと正確に誘導される。この花粉管ガイダンスという現象において、花粉管誘引物質LUREsは最も重要な雌側の鍵因子の1つである。本研究では、誘引物質群LUREsの受容体を同定するとともに、花粉管によるLUREsの受容・応答機構を解明することを目指している。これまでに、花粉管が雌しべ組織の花柱によって、LUREに対する結合性と応答性の少なくとも2段階で制御されていることを明らかにした (Okuda et al., 2013)。この知見をもとに、花粉管の生理状態に着目した比較プロテオーム解析を行なった結果、複数の受容体様キナーゼを受容体候補として同定した。平成26年度は、LURE受容体の同定に向けて、リガンド-受容体結合実験に向けての整備を行なった。これまでに、LURE2については蛍光色素Alexa 488を用いた化学修飾により、LUREを直接可視化する技術を共同開発している (Goto et al., 2011)。しかし、LURE1については、同様の手法では蛍光色素の標識が実現できていなかった。そこで、佐藤 綾人博士、桑田 啓子博士(名古屋大学 トランスフォーマティブ生命分子研究所)との共同研究を進めることで、LURE1の蛍光標識方法の改良を行なった。新たな標識方法を模索することで、これまでは実現できていなかったLURE1の可視化に成功した。これは、リガンド-受容体の結合実験だけでなく、可視化LUREsを用いた花粉管誘引のイメージングにも応用が期待される成果である。また、受容体候補タンパク質について、タバコ培養細胞に遺伝子導入し、組換えタンパク質の発現、精製を行なった。今後、受容体固定化ビーズを作製し、可視化LUREを用いて受容体候補タンパク質との結合活性を確認していく。
|