研究課題/領域番号 |
13J30005
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
遠山 周吾 慶應義塾大学, 医学部, 特別研究員(PD)
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キーワード | ES細胞 / iPS細胞 / 心筋細胞 / 代謝 / 心筋分化 / 精製 |
研究概要 |
我々は2013年に心筋細胞と未分化幹細胞における代謝の特性をメタボローム解析により明らかにすることで、無糖乳酸添加培地にて培養するという極めて簡便な方法によって効率よく心筋細胞のみを選別する方法を確立することに成功している(Tohyama et al. Cell Stem Cell 2013)。その手法が大量培養システムにおいても適応可能かを調べるために、我々はまずスピナーフラスコを用いて心筋細胞を分化誘導することができるかを確認する実験を行った。その結果、スピナーフラスコを用いた場合、培養皿を用いて分化誘導する場合に比べてより均一な胚様体が得られることがわかった。また、スピナーフラスコを用いて心筋細胞を分化誘導した場合、培養皿を用いた場合に比べてアポトーシスを引き起こす細胞がより少ないことが明らかとなった。次に、スピナーフラスコを用いて心筋分化誘導した細胞を無糖乳酸添加培地により純化精製したところ、純化精製前には心筋細胞の純度が25%であったが、純化精製後には99%以上まで上昇することを確認した。純化精製後のヒトiPS由来心筋細胞を免疫染色したところ、ほとんどすべての細胞がα-アクチニン陽性の心筋細胞であった。以上の結果から、無糖乳酸添加培地を用いた心筋細胞の純化精製システムは大量培養の系でも適応可能であることが示され、今後の再生医療においても大いに活用できる手法であることが示された(論文投稿中)。平成26年度以降はこれらの成果を踏まえ、代謝の特性を利用した新規心筋分化誘導法および純化精製法の確立を目指している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年以降の代謝の解析に大量の心筋細胞が必要であり、平成25年度に大量純化精製システムが確立できたことは大きな進歩であると考えている。今後は、大量純化精製システムから得られる心筋細胞を用いた代謝解析を行っていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
代謝の解析に大量の心筋細胞が必要であり、平成25年度に大量純化精製システムの確立を目指した。平成26年度からは、ヒトES細胞iPS細胞の代謝解析およびヒトES/iPS由来心筋細胞における網羅的代謝解析を行い、新規心筋分化誘導法あるいは純化精製法の確立を目指す。 分化誘導法に関しては既存の方法と比べて心筋細胞の分化誘導効率がよいかどうか、純化精製法に関しては未分化幹細胞除去能が無糖乳酸添加培地に比べて優れているかどうかを評価する予定である。
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