研究課題
心臓再生医療を実現化するためにはおよそ数億個もの心筋細胞を移植しなければならず、大量培養系の確立が求められている。したがって、我々は大量培養システムにおいても適応可能かを調べるために、まずスピナーフラスコを用いて心筋細胞を分化誘導することができるかを確認する実験を行った。その結果、スピナーフラスコを用いた場合、培養皿を用いて分化誘導する場合に比べてより均一な胚様体が得られることがわかった。次に、スピナーフラスコを用いて心筋分化誘導した細胞を無糖乳酸添加培地により純化精製したところ、純化精製前には心筋細胞の純度が25%であったが、純化精製後には99%以上まで上昇することを確認した。また純化精製後のヒトiPS由来心筋細胞を免疫不全マウスの皮下に移植したところ、純化精製後のヒトiPS由来心筋細胞は全く腫瘍を形成しなかったのに対して、ヒトiPS細胞は90%以上、純化精製前の胚様体は50%以上の頻度で腫瘍形成を来した。以上の結果から、無糖乳酸添加培地を用いた心筋細胞の純化精製システムは大量培養の系でも適応可能であることが示され、今後の再生医療においても大いに活用できる手法であることが示された(Hemmi, Tohyama, et al. Stem Cells Transl Med 2014)。さらに我々はヒトES細胞における網羅的代謝解析を行うことにより、腫瘍形成の原因となる未分化幹細胞除去条件をさらに効率化し、より短期間で未分化幹細胞を完全に除去し、さらに心筋細胞のみを純化精製可能な代謝条件を確立した(現在論文準備中)。本手法は以前に我々が報告した無糖乳酸添加培養による未分化幹細胞除去法よりもさらに未分化幹細胞除去効率が高いため、細胞移植治療を臨床応用する上で極めて重要な技術になると考えている。
2: おおむね順調に進展している
『無糖乳酸添加培地を用いたヒトES/iPS由来心筋細胞における純化精製法』をより大量スケールで行うために、バイオリアクターを用いた心筋細胞の純化精製システムを構築し、昨年度Stem Cells Translational Medicine誌に発表しており、大きな課題である大量の心筋細胞を作製する方法を構築したことは大きな進歩であると考えている。また、新規の純化精製法に関しても代謝解析およびメカニズム解析を終え、今後論文投稿予定であり、期待通り研究が進展していると考えている。
代謝の解析に大量の心筋細胞が必要であり、平成26年度に大量純化精製システムの確立を行った。また、さらにヒトES細胞iPS細胞の代謝解析およびヒトES/iPS由来心筋細胞における網羅的代謝解析を既に行っており、新規心筋純化精製法を確立している。平成27年度は新規心筋純化方法における残存未分化細胞の詳細な評価および新規分化誘導方法を構築することを目標としている。分化誘導法に関しては既存の方法と比べて心筋細胞の分化誘導効率がよいかどうか、純化精製法に関しては未分化幹細胞除去能が無糖乳酸添加培地に比べて優れているかどうかを評価する予定である。
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Stem Cells Translational Medicine
巻: 3 ページ: 1473-83.
doi: 10.5966/sctm.2014-0072.