研究課題
カルパインとはカルシウム依存性タンパク分解酵素であるが、その生体での役割には依然不明な点が多い。本研究では、カルパイン、またその内在性抑制タンパクであるカルパスタチンが心不全で果たす役割について明らかにすることを目的としている。本研究ではカルパスタチン欠失マウスに心筋梗塞モデルを作成し野生型マウスと比較した。Western blot(WB)および免疫染色による解析で、心筋梗塞慢性期に梗塞領域に隣接する辺縁領域の心筋細胞でカルパインが活性化しており、カルパスタチン欠失マウスでは野生型に比較してカルパインの更なる活性化と心不全の有意な悪化を認めた。カルパイン活性が認められる梗塞後辺縁領域ではカルパスタチン欠失マウスでの有意な介在板構成タンパクの発現の減少、心不全関連遺伝子発現増加が認められた。さらに培養ラット新生仔心筋細胞ではカルパイン活性化により介在板構成タンパクであるN-cadherinの分解と介在板構造の変化が認められた。これらの結果から心筋梗塞では慢性期の辺縁領域心筋細胞におけるカルパイン活性化により、介在板タンパクの分解を通じて介在板構造の変化をきたすことが明らかとなり、介在板の脆弱性が心不全進展の重要なメカニズムの一つになっていることが示唆された(Kudo-Sakamoto et al., JBC, 2014)。またカルパインの新規分解タンパクとして今まで報告のないCaMKIIδに着目した。mutagenesisの手法によりカルパインに分解されないCaMKIIδ変異タンパクを作成し、分解部位の同定および分解メカニズムの解明を進めているところである。CaMKIIδは心不全において治療標的として注目されているタンパクであり、今まで知られていないカルパインとの関係を明らかにすることで将来的に創薬応用への可能性も視野に入れられる。
2: おおむね順調に進展している
カルパインが心筋梗塞後の心不全進展に関わるメカニズムについて一編の論文にまとめた。また第5回Molecular Cardiovascular Conference II、第18回日本心不全学会学術集会において研究成果の発表を行った。
今後はCaMKIIδ変異タンパクを発現するベクターを使用してその機能解析を行っていく。さらに心筋細胞に感染させて病態的意義についても検討していく予定である。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)
The journal of biological chemistry
巻: 289 ページ: 19408-19419
10.1074/jbc.M114.567206