研究課題
平成25年度は自然免疫応答のなかでも最も強力なTLR4/MD-2に注目し研究を進めた。TLR4/MD-2はLPS受容体であるが、LPSやその活性中心であるリピッドAの分子構成には多様性がある。その1つであるモノリン酸化リピッドA (MPL)は弱毒/低炎症性のリガンドとして知られている。MPLは典型的な強力に炎症誘導するリピッドAとの違いが微細であり、どのようにTLR4/MD-2がその違いを見分けているのか明らかではなかった。MPLの低炎症性の分子基盤としてリピッドAに比べてMyD88依存性経路が減弱しておりTRIF依存性経路側に偏ったシグナルを伝達していることが報告されていたが、なぜそのようなシグナル伝達の偏向がおきるのか、その詳細は不明であった。今回、我々はMPLがとても独特な経路、LBP媒介性CD14非媒介性にTLR4/MD-2に認識されることを見出した。それに呼応してCD14依存的なTLR4/MD-2の2量体化が著しく減弱していることも明らかとなった。このことから、CD14非媒介性TLR4/MD-2活性化による2量体化不全が炎症性サイトカイン産生に影響を及ぼし低炎症性の表現型として現れ、加えて、アジュバント効果に影響を及ぼすと考えられる共刺激分子CD86の細胞表面発現の上昇に注目した。これはTRIF依存性経路によって誘導されることが既に報告されているが、CD86の発現上昇は別のTRIF依存性応答のIFNβとは異なり、CD14非依存性かつ受容体の細胞内移行を阻害にも抵抗性の応答であった。以上のことから、MPLの低炎症性の分子基盤として、これまでに提唱されていたMyD88依存性応答の減少というよりCD14媒介性応答の欠落の結果であること捉えなおすことが適当であると考えることができる。
2: おおむね順調に進展している
TLR4/MD-2の弱毒性リガンドであるモノリン酸化リピッドAを強毒性リピッドAと比較検討することで、その認識からTLR4/MD-2活性化までの認識様態の多様性を発見し、また自然免疫活性化による獲得免疫誘導メカニズムとその活性化プラットホームの一端として、共刺激分子CD86の発現上昇について明らかにし、その結果をInternational Immunology誌に投稿、採択された。また最近は新規にTLR4/MD2の動態解析法を見出しており、抗原提示の観点からの解析を進めることで今後の研究成果が見込めるため。
今後はMPLによって有意に活性化されている抗原提示プラットホームの活性化とその担当分子移動に注目した解析を進める。新規にTLR4/MD2の動態解析法も見出しており、新規の解析法も利用して進める。また担当分子候補である分子のノックアウトマウスの解析を既にはじめており、ノックアウトマウスの表現系からも抗原提示プラットホームの動態などから機能解析をすすめる。
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Journal of Immunologyl
巻: 191 ページ: 1856-1864
10.4049/jimmunol.121996