研究課題
自然免疫応答のなかでもToll like Receptor4/MD-2リガンド応答は、炎症、抗原提示において強い活性を示す。実際に低炎症性であるとされる人工的なLPS誘導体のMPLは既にワクチンアジュバント成分として臨床応用されており、その有用性が分かる。しかしながら過度の炎症応答によるとも考えられる副反応も多く認められており、その免疫応答の機序の詳細を知ることは重要な課題であるといえる。昨年度、我々はMPLがとても独特な経路、LBP媒介性CD14非媒介性にTLR4/MD-2に認識されることを見出した。それに呼応してCD14依存的なTLR4/MD-2の2量体化が著しく減弱していることも明らかとなった。このことから、CD14非媒介性TLR4/MD-2活性化による2量体化不全がTNFαなど炎症性サイトカイン産生に影響を及ぼし低炎症性の表現型として現れることを明らかとした。またこれまでに、抗原提示プラットホームの活性化を制御すると考える候補分子を同定しており、解析を進めている。この分子について、LoxPシステムのコンディショナルノックアウトマウスを入手し、樹状細胞特異的Creマウス(CD11c-Cre )、マクロファージ特異的Creマウス(LyszM-Cre)と交配、解析を進めた。残念なことに、CD11cCreマウスでは十分なノックアウトが確認できず、抗原提示について全く検討するに至らなかった。また、予想通り、この分子の役割は自然免疫応答のうち炎症応答には関与しないとの結果をマクロファージ特異的Creマウス交配のノックアウトマウスで確認した。。
2: おおむね順調に進展している
CD11cCreマウスを用いた抗原提示関連分子のコンディショナルノックアウトマウスの作成と解析がうまく進まなかった一方で、自然免疫応答の分子メカニズム解析を精力的に行った。その結果、自己免疫疾患にかかわる自然免疫受容体TLR7についてその活性制御機構の解析を進め、その炎症性の分子基盤についてNature Communication誌とInternational Immunology誌に共著論文として発表した。
今後は対象としている分子のコンディショナルノックアウトマウスについてCD11c-Cre に替わって樹状細胞でのノックアウトを実現する別のCreマウスを検討し、解析を進めていく予定である。また自己免疫疾患マウスにおいてはB細胞からの抗原提示も重要であることからB細胞特異的なCreマウスを用いた解析も行いたい。さらには阻害剤を使った実験を加えて、炎症及び抗原提示応答について検討をしたい
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Nature Communications
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International immunology
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http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/kanseniden/