研究実績の概要 |
本研究では、人工核酸PNAを用いた光による新たなDNA操作法の開発を目指している。オフターゲット認識を抑制し、巨大DNAの特定の配列を正確に認識できる人工核酸としてPNAが知られているが、本年度の研究によってPNAの末端にチアゾールオレンジ(TO)を修飾したPNAが任意のDNAの配列に対する精密な蛍光プローブとなると同時にDNAに位置選択的に光損傷を与えるツールとなることが分かった。本研究では長鎖DNA中にPNAの二本鎖インベージョン(侵入)を起こさせるためにpcPNA(pseudo-complementary PNA)を用いている。pcPNAの核酸塩基は、安定なDNAとの二本鎖形成のために天然の核酸塩基A,Tのかわりにそれぞれ2,6-ジアミノプリン(D)、2-チオウラシル(Us)を用いている。このpcPNAのN末端側にPEGリンカーを介してTOを化学修飾した。TOは水溶液中ではほぼ非蛍光性であるが、pcPNAがDNAのターゲット配列にインベージョンした際に両末端の二重鎖部分のDNAにインターカレートして強い蛍光発光を示す設計となっている。基質DNAとして数百bpおよびプラスミドDNAを用いたが、ターゲット配列を持つDNAでのみ強い蛍光発光が見られた。また二重鎖DNAに対して一塩基対の違いも簡便に蛍光発光で認識できることがわかった。またTOは光励起により一重項酸素を発生させるためインベージョンコンプレックスの光照射により、ターゲット近傍に8―オキソグアニンが生成することがわかった。このように本年度の研究では巨大DNAの特定の配列を正確に認識できる人工核酸PNAの末端にTOを修飾させたものを合成し、位置選択的にDNA光損傷を起こす系を構築した。
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