研究課題/領域番号 |
13J40065
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
石井 いずみ (小田 いずみ) 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(RPD)
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キーワード | 母性因子 / Ciona intestinalis / シス調節領域 / クロマチン免疫沈降 |
研究概要 |
様々な動物種において、発生開始時の母性因子の局在パターンに従って、領域特異的な発現を開始した転写因子やシグナル伝達因子などの調節因子により、胚の領域によって異なった遺伝子ネットワークが開始される。申請者はこれまで、ホヤの発生過程の最も初期に胚性発現を開始する調節遺伝子、全16個の転写調節機構の解析を進める過程で、既知の母性因子GATA-a、β-cateninおよびMacholが転写調節にはたらいていることを示唆する結果を得た。しかし、これらの因子がどのように、前述の16個の調節遺伝子の多様な発現パターンを実現しているかは明らかにできていない。本研究の目的は、発生開始時に、母性因子がどのように胚性遺伝子ネットワークを開始させるかについて、体系的かつ包括的に理解することである。このために、ホヤの発生過程の最も初期に胚性発現を開始する、全16個の調節遺伝子の転写調節機構を体系的かつ包括的に明らかにする。 平成25年度の研究実施計画では、1)全16個のシス調節領域の解析を終える。2)同定されたシス調節領域に結合し、遺伝子の転写調節を行う母性因子を探索、解析する。ことを予定していた。前期が終了した現時点で、未解析の7個の遺伝子についてシス調節領域の解析を行い、うち、2個については、解析済みの遺伝子と同様に、既知の母性因子(Machol、β-catenin、GATAa)による調節が行われていることをすでに明らかにした。また、平成26年度に予定している、クロマチン免疫沈降による母性因子の各シス調節領域への結合の確認 のために、small scaleでのクロマチン免疫沈降のプロトコルを検討し、約8000個のCiona intestinalis細胞から、転写因子によるクロマチン免疫沈降を可能とするプロトコルを確立した。このプロトコルを用いることで、クロマチン免疫沈降による解析を、限られた数しか用意できない実験胚にまで広げることができるため、今後研究を遂行する上で、重要な成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画では、全16個のシス調節領域の解析を終えることを予定している。現時点で、解析を終了している遺伝子は9個だが、16個の調節遺伝子の示す発現パターンの全種類(7種類)をすでに網羅しており、クロマチン免疫沈降のsmall scaleのプロトコルを確立し、次の段階に進むことを優先した結果であり、研究は全体として順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、既知の母性因子(Machol、β-catenin、GATAa)のノックダウンおよび過剰発現実験を行うことにより、これらの因子の16個の調節遺伝子の転写調節機構における役割を明らかにする。また、免疫供沈降により、因子間相互作用を調べ、これらの因子がどのように協調して、7種類の発現パターンを実現しているかを調べる。野生型胚に加え、ノックダウンまたは過剰発現胚を用いてクロマチン免疫沈降を行うことにより、これらの因子が各シス調節領域上で、どのような挙動を示しているか解析する。このためには、クロマチン免疫沈降に十分なサンプル量(small scale protocolでも8000細胞)を用意する必要がある。従って、マイクロインジェクション法の代わりに、エレクトロポレーション法によるDNAもしくはmorpholino oligoの胚への導入、または、薬剤処理などによる、遺伝子ノックダウン胚または過剰発現胚を大量に用意する方法を確立する。
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