研究課題/領域番号 |
13J40074
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小澤 綾子 東京大学, 医学系研究科, 特別研究員(RPD)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 免疫グロブリン / 免疫グロブリン受容体 / 硬組織 / 破骨細胞 |
研究実績の概要 |
我々の研究グループは、免疫グロブリン受容体(FcγR)が破骨細胞前駆細胞に発現するITAM分子、DAPとFcRγが破骨細胞を制御することを明らかにした。しかし、炎症や免疫応答においても非常に重要であるFcγRの破骨細胞分化で意義は未だ不明である。一方、RA等の自己免疫疾患だけでなく、意義未確定単クローン性免疫グロブリン血症においても骨粗鬆症が観察され、これらの疾患に共通する特徴は免疫グロブリンの高値である。そこで、免疫グロブリンが破骨細胞分化機能に直接的、決定的に制御することを生体レベルで証明し、そのメカニズムを分子レベルで解明する。本研究は免疫グロブリンが関与する骨疾患を理解し、治療のための分子基盤を確立する上で重要である。 これまで、マウスに存在するFcγRのうち抑制型FcγRIIBと活性型FcγRIIIが破骨細胞前駆細胞に優位に発現することを見出し、FcγRIIB欠損マウスの骨組織の解析を行った。その結果、自己免疫疾患の症状が認められない生理的条件下、つまり、免疫グロブリンの非存在下ではFcγRIIIは活性化していないか、または活性化が破骨細胞分化を促進しない可能性が考えられた。 本年度は、FcγRIIIの機能を解析するため、FcγRIII欠損マウスの骨組織の解析を実施した。FcγRIIIはFcRγに会合するため、FcγRIII欠損マウスは破骨細胞数を減少させ、骨量増加を呈すると考えられたが、実際には、破骨細胞数を亢進させ、骨量低下を示した。そこで、FcγRIII欠損マウスの破骨細胞前駆細胞を用いてFcRγ会合性免疫受容体のタンパク質発現を解析したところ、これらのタンパク質の発現の増加が見られた。このことから、FcγRIIIの発現量は破骨細胞分化が進行するにつれ低下し、次第にFcRγが他の免疫受容体に会合し、破骨細胞分化が可能となることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究の進捗状況は順調で、着実に前に向かって進んでいる。本研究課題は、出産および育児により1年半程度、中断を余儀なくされたが、計画的に実験に取り組むことができ、少しずつではあるが、研究の成果も出始めている。 本年度は、遺伝子欠損マウスの骨解析を中心に精力的に実施することができた。また、並行して免疫グロブリン/免疫グロブリン受容体による破骨細胞分化シグナルの解析も実施することができため、免疫グロブリンによる新たな破骨細胞分化シグナルを生体レベルおよび分子レベルで明らかにしつつある。また、この得られた研究成果の一部は国際学術雑誌へ投稿、発表することができた。現在さらに、免疫グロブリンによる破骨細胞分化シグナルの解析を進めると同時に論文にまとめ、学術誌への投稿の準備も進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は、免疫グロブリン受容体、FcγRIIB/FcγRIIIを介したシグナルがどのように破骨細胞分化に影響するかについて明らかにして行く予定である。各Fcγ受容体は免疫グロブリン(IgG)サブタイプへのアフィニティーに依存して細胞内に活性または抑制型のシグナルを伝達する。そこで、shRNAによりFcγRIやFcγRIV発現をノックダウンした骨髄細胞およびFcγRIIBやFcγRIII遺伝子欠損マウス由来の骨髄細胞を用いて破骨細胞分化培養実験を行い、破骨細胞分化および機能を評価し、IgGの作用に対する責任受容体の存在を明らかにする。 また、IgGや免疫複合体がどのように破骨細胞分化に関与するかを解明する。自己免疫疾患に起因し、骨量低下を呈するFcγRIIB遺伝子欠損マウスの血清をサイズ排除クロマトグラフィー法により分画し、IgGや免疫複合体の分離精製を行う。精製画分を破骨細胞分化培養系に作用させ、破骨細胞分化を活性化させる分画を同定する。 さらに、免疫グロブリンが直接的に破骨細胞分化を促進するかどうかを検証する。市販の免疫グロブリン各サブタイプ(IgG1、IgG2a、IgG2b)を破骨細胞分化培養系に添加し、破骨細胞分化および機能への影響を評価する。RAのリウマチ因子に代表されるように自己抗体は免疫複合体を形成する。このことを考慮し、各サブタイプ単体の効果だけでなく、免疫複合体の効果について破骨細胞分化培養系に添加し、破骨細胞分化および機能を評価する。 これらを明らかにすることにより、免疫グロブリン受容体が破骨細胞分化を直接的、決定的に制御することを分子レベルで解明していく。
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