研究課題
本研究では、申請者らが病態解析に携わって来た母斑関連メラノーマモデルマウスと新しく確立に成功したデノボメラノーマモデルマウスの2種類のモデルマウスを用いて、ヒトのメラノーマの発症や進行に関わる可能性の高い遺伝子の選別と機能解析を進めることで、メラノーマの発症のメカニズムの解析を行うことを目的としている。さらに、モデルマウスを用いて、将来ヒトの治療につながる治療法の開発を目指す。まず本研究では、マイクロアレイ法によって選別された遺伝子のうち、P遺伝子を第一の候補遺伝子として研究を進めている。結果は以下の通りである。結果(1) ; Matrigel invasion assay法を用い、in vitroにおけるP遺伝子のメラノーマ浸潤能への影響を調査したところ、P遺伝子の発現を低下させることでメラノーマ浸潤能が有意に抑制された。また、P遺伝子の発現量を低下させた細胞株において培養7日間における細胞数変化への調査を行つたところ、P遺伝子の発現量が高い細胞に比べて細胞数の減少が見られた。しかし、その影響は浸潤能への影響に比べ小さかった。結果(2) ; ヒトメラノサイト系良性腫瘍、メラノーマを含むTissue arrayにおいて免疫染色法を用いてP遺伝子の発現解析を行ったところ、メラノーマ組織におけるP遺伝子発現の増加が観察された。そこで、WinROOFソフトフェアを用いて発現量の数値化することでさらに詳しい解析を行ったところ、統計学的にもメラノーマ組織におけるP遺伝子の発現量の増加が認められた。結果(3) ; ヌードマウスにP遺伝子の発現量の高いメラノーマ細胞株と発現量の低いメラノーマ細胞株を皮下注射し腫瘍サイズへの影響を観察したところ、P遺伝子の発現量が低い移植癌において腫瘍サイズ増加レベルの低下が検出された。以上の結果より、P遺伝子の発現量の増加によりメラノーマの成長、浸潤が促進される可能性が強く示唆され、分子標的治療法の有力な候補遺伝子となることが期待できた。
2: おおむね順調に進展している
ウェスタンブロット、Real-time PCR法を用いた解析に用いるヒト組織検体数が十分ではなかったため、これらの手法を用いたヒト組織における解析にやや遅れが生じている。しなしながら予備実験では有効な結果が得られているため、検体が集まり次第すぐに研究に着手可能な段階である。次年度以降も、研究協力者の協力のものと、収集を続ける予定である。一方、P遺伝子以外のメラノーマ分子標的治療法の候補遺伝子の機能解析に関して1は、当初の計画以上に進展している。その1つのEspin遺伝子について研究成果としてまとめることに成功した(Yanagishita, Kumasaka et al., Mol Cancer Res. 12 (3), 2013)。
おおむね順調に進展しているため、当初の計画予定通りに研究を遂行する。また、本研究では、P遺伝子をメラノーマ分子標的治療法の第一候補として研究を遂行しているが、P遺伝子のみならず他にも複数の候補遺伝子の選別が進んでおり、これらの遺伝子の中には当初の計画以上に解析が進んでいるものもあるため、進行度合によっては、P遺伝子以外の候補遺伝子の解析を前倒しにして進めることも考慮している。
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Archives of Toxicology
巻: (印刷中)
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