研究概要 |
はじめに、マイトファジー誘導条件下、マイトファジーに必須なタンパク質Atg32の精製用tag付きコンストラクト、Atg32-3xStrep-8xHisをAtg32欠損株において発現し、これを精製することで、タンパク質複合体の構成因子候補としていくつかの因子が質量分析により同定された。それらの中には、E3ユビキチンリガーゼ、Rsp5やミトコンドリアタンパク質ATM1, SFC1, ETR1等が挙げられた。コハク酸、フマル酸トランスポーターであるSFC1, ミトコンドリア内での脂肪酸合成経路に関わるエノールチオエステル還元酵素、ETR1やRsp5においては、IP実験、Two hybrid Assayによって、相互作用が確認出来なかった。一方で、鉄代謝において重要な働きをしているミトコンドリア局在のABCトランスポーター、ATM1においてはAtg32と顕著な相互作用が確認された。さらに、Atg32の膜間スペースに突き出たC末側を削ったコンストラクト、atg32 (1-388)-TM-3HAnでは、ATM1との相互作用があきらかに減少し、Atg32とATM1のミトコンドリア膜間スペースでの相互作用の可能性が強く示唆された。しかしながら、ATM1の過剰発現やATM1の欠損によって、マイトファジーの活性自体には影響がみられないことから、これらの相互作用が、なんのために、またどのように、マイトファジー誘導時に働くのかは、現在のところ明らかとなってはいない。上記以外にもAtg32との相互作用因子候補として挙っている因子群は他にも存在し、これら因子群の更なる機能解析を進めることで、マイトファジーの活性化(または収束)のシグナリングにおいて、Atg32がどのように他のタンパク質群と協同して、機能しているのか、詳細な機序の理解を深めることが期待される。
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