研究課題/領域番号 |
13J40101
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
中山 真里子 早稲田大学, 文学学術院, 特別研究員(RPD)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 単語認識 / 日英バイリンガル / 心的辞書 / L2-L1 Masked Priming / 語彙判断 |
研究実績の概要 |
本研究では日英バイリンガルの単語認識プロセスについて、特にL1(日本語)とL2(英語)の意味のつながりについて焦点をあて実証実験を行っている。研究手法は、当該分野の研究で多く用いられており過去研究の結果と直接的な比較が可能であるマスク下のプライミングパラダイムである。
初年度から行っている研究では、L2語からL1語方向においても意味表象を介した単語間のリンクが構築されるのかについて検討し、英語力の高いバイリンガルにおいてはリンクが構築されることを確認した。一方、英語力が低いバイリンガルでは、リンクは構築されていないことが示された。つまりL2→L1方向の意味的リンクの有無がL2の熟練度により影響を受けることを示した。前年度にこの結果をまとめ投稿した論文は、査読の結果修正を求められたことから、26年度に対応し再投稿をを行い、結果国際誌に受理された。
上記研究結果をさらに発展させるため、英語力の上達が単語間の表象にどのような影響を与えるのかについて、2つの側面から研究を行った。まず、L2-L1語の意味的リンクの発達を示した熟練度の高いバイリンガルのみを対象に、L2プライムによるL1単語認識の促進効果の反応時間の分布をDistributional Analysisという手法を使い検討した。これにより、意味を介したリンクの存在を示す促進効果の詳細について、従来の反応時間の平均値を従属変数とした研究では知ることのできない情報を得た。現在までに、データ収集、データ分析を終え、現在論文を執筆中である。次に、L2-L1語の意味表象のリンクの有無が、何故英語力により影響を受けるかという疑問に対し、先行研究で指摘されている、英語力によりL2表象が保存されている記憶システムが異なるという可能性を検証する実験を行った。この研究は、現在もデータ収集中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
表記の異なるバイリンガルを対象にした研究では、L2-L1方向の翻訳プライミング効果が観察されず、それを受け「観察されない」という結果を説明するための単語認識モデルが提案されてきた。本研究課題の結果、表記の異なるバイリンガルにおいても、L2-L1方向の翻訳プライミングが起こること、またその効果は英語力熟練度により影響を受けることを示したことで、当該研究領域に新しい知見を提供することができたと考えているから。また、当初の計画通り、この研究結果を発展させるための新たな研究に着手していることから。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、現在進行中である英語力と英単語の記憶システムの研究を進め、2言語の意味的リンクの仕組みの発達的変化の詳細を明らかにする。この研究は多数の被験者に複数回実験に参加してもらうことから、26年度の研究の中核的な実験となる。
また、これまでの研究では、意味リンクの存在を調べる目的で対訳語(muscle-筋肉)を使用していたが、2言語間に強い意味レベルの繋がりがあるとすれば、意味的に関連する単語(Egypt―ピラミッド)間でも促進効果がみられるはずである。バイリンガルを対象とした意味的プライミング効果の検証は数少なく、特に表記の異なるバイリンガルを対象に行った研究はほとんどないことから、この仮説を検証するために実験を行う予定でいる。
前年度で得られたDistributional Analysisの結果を論文として投稿するべく執筆活動を行う。
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