研究課題/領域番号 |
13J40118
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
谷内 久美子 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(RPD)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 市民参加 / 都市計画 / 地域コミュニティ / 道路連絡会 / 協働関係 |
研究実績の概要 |
①道路連絡会の意義と課題 道路連絡会に関する文献調査、関係者のヒアリングを行い、意義と課題をまとめた。いずれの道路連絡会も沿道環境の改善に寄与すべく、公害患者と道路管理者が協議を行う場となっているが、各連絡会によって取り組み状況が異なる。取り組み内容が異なる要因としてまず挙げられるのは、連絡会の構成メンバーの違いである。初期の段階で和解が行われた西淀川、尼崎、川崎においては道路連絡会のメンバーとして環境省が含まれていないが、名古屋南部、東京では環境省はメンバーとして含まれている。また、東京道路連絡会では、被告側に東京都が入っており、国道、高速道路だけでなく、都道を含めた対策について検討することが可能である。2つ目としては、原告団を支援する専門家の存在である。専門家や学識経験者は、住民側を代弁(アドボケート)し、専門知識に基づいた提案を作成している。川崎は、西淀川の提案を参考にしながら、住民をエンパワーメントして提案づくりをしている。 ②過去の水害の継承が防災意識に与える効果 大阪市西淀川区の住民に対して実施した災害に関するアンケート調査で得られたデータを分析し、都市部において過去の防災に関する伝承の経験が住民の防災意識や日頃の備えに与えている影響を明らかにした。まず、災害に対する意識や取組みに関して因子分析を行い、「自助」、「共助」、「地域への危機意識」の3因子が抽出された。次に、二元配置の分散分析を行った結果、水害の記憶の継承が「地域への共助意識」に影響を与えているが、「行動」の萌発までの影響はみられなかった。従って、地域への共助意識を喚起するために、防災パンフレット等に過去の災害の記憶を掲載することが有効であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コミュニティの社会的イノベーションを都市計画に反映させる必要条件をテーマとして研究に取り組んだ。道路連絡会に関する文献調査、西淀川道路連絡会への参加、参加者へのヒアリング調査といった現地調査を行い、道路連絡会の成果と課題を整理した。大気汚染訴訟都市計画の分野において十分に評価されていない。また、平成25年度に得た過去の水害に関するヒアリング調査およびアンケート調査に関する分析を行い、過去の水害の継承が防災意識に与える効果を明らかにした。 研究業績に関しては、今年度は学会発表を1回行った他、平成27年度に発行される予定の書籍の原稿を執筆した。平成27年度は、平成26年度に収集したデータを詳細に分析し、論文にまとめる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
1)地域コミュニティによる社会的イノベーションの創出に関する研究会 公害地域再生センターと共に研究会を開催し、研究方法に関する検討、調査結果に関する考察を行う。研究会は年に3回程度開催する。研究会での議論を元に、国内外での研究成果の公表を進める。 2)大阪市西淀川区における地域コミュニティの変遷の把握 1年目の文献調査、市民グループへの聞き取り調査を元に、地域コミュニティの変遷のモデルを作成する。そのモデルの内容を検証するために、西淀川区民へのアンケート調査を用いる。アンケート調査は、市民グループに入っている市民だけではなく、広く一般の市民に対して行い、市民グループによる公害反対運動や地域再生活動の認知度、関わり方などを把握する。 3)社会的イノベーションを都市計画の決定手続きの中に反映させる場としての道路連絡会の検討 尼崎、川崎、尼崎、名古屋南部、東京地域の道路連絡会への聞き取り調査、文献調査を行う。道路連絡会という枠組みをどのように活用すれば、コミュニティの社会イノベーションを都市計画の決定手続きの中に反映できるのかを考察する。
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