本研究では、コミュニティの社会的イノベーションとして、道路沿道環境に関する連絡会と過去の水害における助け合いを取り上げた。 道路連絡会に関しては、文献調査、関係者へのヒアリング調査を行い、意義と課題をまとめた。大気汚染訴訟の和解後に、大阪市西淀川区、尼崎市、川崎市、名古屋市南部、東京都において道路連絡会が実施されている。いずれの道路連絡会においても、道路管理者と大気汚染の被害者である公害患者会との間の協議の場となっているが、各連絡会によって取り組み状況が異なる。取り組み内容が異なる要因としてはあげられるのは連絡会の構成メンバーが異なっていることにある。初期の段階で和解が行われた西淀川、尼崎、川崎においては道路連絡会のメンバーとして環境省が含まれていないが、名古屋市南部では環境省がメンバーとして含まれており、東京都ではさらに東京都も入っている。川崎市では道路連絡会とは別枠で川崎市と道路路に関する勉強会を頻繁に開催している。また、尼崎市ではあっせんを行ったことにより、尼崎市や兵庫県からも協力が得られている。様々な主体が関わることにより、道路沿道の環境改善施策についての多様な観点からの取り組みが可能になる。 過去の水害における助け合いとしては、過去に水害が頻発した大阪市西淀川区において災害に関するアンケート調査を行った。災害に対する意識や取組みに関して因子分析を行い、「自助での対応」、「コミュニティの取り組み」、「居住地域での災害の受容意識」の3因子が抽出された。次に、二元配置の分散分析を行った結果、水害の記憶の継承が行動の萌発に与える影響は見られなかったが、「居住地域での災害の受容意識」に影響を与えていた。ここから過去の水害を若い世代に伝えていくことが重要であるということがいえるため、地域の防災意識を高めるために防災教材を作成した。
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