本研究では,否定的な思考から距離をおくスキル(破局的思考の緩和)がなぜ多数の心理的症状に奏効するのかについて,共通の要因として反復思考(否定的な思考が持続すること)に注目した検討を行っている。具体的には,反復思考が破局的思考の緩和と多様な症状との関連を媒介するという可能性を3つの課題を通じて検討することを目的とした。 課題1.反復思考の尺度を作成(翻訳)し,種々の症状との関連を検討する。 課題2.破局的思考の緩和の反復思考への効果を検討する。 課題3.破局的思考の緩和が反復思考を媒介して症状低減効果を持つというモデルを検討する。 平成26年度には,以下の研究を行った。 1.反復思考と破局的思考の緩和と各種の心理的症状との関連を検討した。その結果以下の知見が得られた。(a)反復思考は多くの心理的症状と正の関連を,破局的思考の緩和は負の関連を示すことが見いだされた。(b)破局的思考の緩和と心理的症状の関連は,反復思考が媒介していた。(c)反復思考の頻度と反復思考に対するネガティブな評価との相関は,破局的思考の緩和が強い場合には弱くなることが見いだされた。 2.応用的研究として,反復思考の一種である強迫的侵入思考と関連するメタ認知について検討した。失敗・汚染・攻撃という典型的な3種類の内容の強迫的侵入思考に対して生じやすいメタ認知的評価と制御方略は異なっていることが分かった。 3.縦断データの予備的な解析を行った(縦断調査は最終年度も継続予定)。 これらの成果として,Advances in Psychology Research(Nova Science)という図書に1論文が収録された(英文)。また,国際誌で審査中の論文が4本ある。 平成27年度は,縦断調査を完了し,結果を論文化することを目的とする。
|