1)特定の災害で形成されたことが明らかな堆積物の有機炭素分析による特徴の一例として検討した,北海道日高沖の2011年台風10号による洪水堆積物の解析結果について,地質学雑誌に論文を投稿し受理された. 2)堆積有機物分析による堆積プロセス検討の一例として実施した,スマトラ沖スンダ海溝及びアチェ海盆の深海底堆積物の解析結果について,Geo-Marine Lettersに論文を投稿した. 3)半遠洋性泥に含まれる全有機炭素を用いた放射性炭素年代を連続して測定した結果,年代値が下位層よりも有意に古い層準が複数認められた.これらは,堆積物の再移動により,本来の堆積年代よりも古い有機炭素が混入したことによると考えられたため,これらをイベント層として認定することができると考えた.イベント層ではない通常層の堆積物に含まれる浮遊性有孔虫の放射性炭素年代を測定し,得られた年代値からイベント層の形成年代を見積もると,17世紀以降に発生した海域地震と洪水に対比される可能性があることが明らかとなった.これらの結果を日本地球惑星科学連合大会2016年大会および日本地質学会第123年学術大会2016年大会にて発表し,論文を投稿した. 4)紀伊半島および房総半島沖深海底から採取された深海底堆積物に含まれる過去のタービダイトについて,特定の災害で形成されたことが明らかな堆積物の有機炭素分析により昨年度までに明らかとなった「陸源有機炭素率の層序的変化パターン」と比較し,その起源と堆積プロセスを検討した.これらの解析の結果,紀伊半島沖の深海底タービダイトには洪水と斜面崩壊による両方の起源のものが含まれているのに対して,房総半島沖の深海底タービダイトの多くが斜面崩壊によるものであり明らかな洪水起源のものが認められない可能性があることが示された.これらの結果は,日本地球惑星科学連合大会2017年大会にて発表予定である.
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