研究課題
ヒトのDaple遺伝子変異が発育遅延や大脳皮質層構造の異常とともに水頭症を示すことから、本研究ではDaple遺伝子改変マウスにおいて脳の構造異常や機能異常を検証している。前年度までに、脳組織内でのDaple発現部位を解析してきたため、当該年度はDapleが機能する組織に焦点を絞って解析した。特に、生後も神経新生が続く脳室帯・脳室下帯に注目して神経新生や新生神経細胞の移動に異常がないか、各種マーカーで免疫染色し、脳組織において構造異常を検証した。その結果、Daple遺伝子変異によって脳室は拡大し、脳室帯における生後の新生神経細胞の移動方向の異常を発見した。側脳室の後ろ側から新生した神経細胞は、後ろから前側へ鎖状に絡み合って移動していく。吻側細胞移動経路(rostral migratory stream)を経由して脳の前側にある嗅球内へ到達するこれらの新生神経細胞は、Daple遺伝子改変マウスにて減少していた。Daple遺伝子改変マウスにて神経細胞の移動がどのように異常なのか解析するため、側脳室壁を切り出して組織染色を行い、脳室側から共焦点レーザー顕微鏡で撮影することで、脳室の裏側にある脳室下帯の神経細胞を撮影した。その結果、神経細胞の分化や鎖状構造は正常に形成されていたが、その移動方向が前側から後ろ側へUターンし、神経細胞の鎖は方向性を失っていた。よって、Daple遺伝子は神経細胞の移動方向を制御していることがわかった。本研究による研究成果は次年度以降各種学会にて発表し、国際科学誌への投稿に向けて論文を執筆している。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Cancer Science
巻: 107 ページ: 133, 139
10.1111/cas.12848