研究課題
知的障害を伴うマリネスコシェーグレン症候群の原因遺伝子SILIの大脳皮質形成における機能解明を行った。in utero electroporationによりE14でSIL1をノックダウンし、神経細胞の局在を観察した。E17, POではノックダウンによる神経細胞移動の遅れが見られたが、P7では目的の位置に移動を完了していたことから、SIL1の機能抑制は大脳皮質神経細胞の移動遅延を引き起こすことが明らかになった。この遅れは神経幹細胞の細胞周期には影響しなかった。そこで移動遅延の原因解明のためにライブイメージングを行った結果、1)大脳皮質形成期の神経細胞が多極性形態から双極性形態に移行できない、2)大脳皮質表面に向かう直線的移動ができない、3)大脳皮質内を移動中の神経細胞が異常な形態変化を繰り返す、という表現型が認められ、その結果、細胞の移動速度が低下し、移動遅延が引き起こされることが明らかとなった。さらにSIL1をノックダウンすると対側皮質に伸びる軸索の伸長が阻害された。これらの結果からSIL1は神経細胞移動、軸索伸長に機能しており神経細胞の移動、分化が適切な発達ステージに行われないことがMSSの知的障害を引き起こす可能性が示唆された。自閉性障害、知的障害、てんかん等の原因遺伝子であるA2BP1がどのような機序で病態を形成するのかについては殆ど知見がないため、発達期の大脳皮質形成過程におけるA2BP1の機能解明を目的とし、その第一段階としてA2BP1の特異抗体を作成し、発達期におけるA2BP1の発現プロファイルを解析した。A2BP1は発達期のマウスの大脳皮質神経細胞、特に移動中の細胞と皮質第2,3層の神経細胞に高発現していた。また神経細胞のA2BP1には核局在型だけでなく細胞質局在型アイソフォームが同定されているが、発達期、成熟期ともに両アイソフォームが検出された。
1: 当初の計画以上に進展している
マリネスコシェーグレン症候群の原因遺伝子SIL1とその標的蛋白質HSPA5の大脳皮質形成における機能解明を行い、論文にまとめることができた。その理由として、当初の想定以上に子宮内胎児電気穿孔法、皮質スライスの共焦点レーザー顕微鏡ライブイメージングの技術を早期に習得でき、効率よく研究が遂行できた。
引き続き自閉症や小児知的障害の病態解析を行う。当初の研究計画では、マリネスコシェーグレン症候群の新規原因遺伝子候補 HSPBP1 も解析対象であったが、原因遺伝子として同定できなかったことから解析対象から外した。今後はSept5, Sept8、さらに特異抗体を作成した A2BP1 について大脳皮質形成過程における機能解析を行う。
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