研究課題/領域番号 |
13J40169
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研究機関 | 独立行政法人農業環境技術研究所 |
研究代表者 |
山下 結香 (鮫島 結香) 独立行政法人農業環境技術研究所, 生物生態機能研究領域, 特別研究員(RPD)
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キーワード | 葉面常在糸状菌 / 生分解性プラスチック分解酵素 / 酵素大量生産 / 発現解析 |
研究概要 |
生分解性プラスチック(生プラ)製農業用マルチフィルム(マルチ)は農作業の省力化や環境問題解決に役立つと期待されている。生プラ製マルチを普及させるために、微生物の生プラ分解酵素を利用して、意図した時期に生プラ製マルチを分解させる技術が研究されている。本研究では、葉面糸状菌47-9株が培養液中に分泌する生プラ分解酵素(PCLE)の実用生産を最終目標に、PCLE発現メカニズムを明らかにすることを目的としている。本年度は「PCLE発現条件下で特異的に働いているタンパク質の収集」を行うための基本条件を整えた。 具体的には、まずフラスコレベルで酵素生産培養条件を検討し、再現性良く酵素生産できるようになった。決定した培養条件で培養した菌体を回収し、RNA抽出法を検討し、RNAの効率的な抽出には菌体破砕条件が重要であったため、現在、最適化を行っている。 さらに、次世代シーケンサーを用いたゲノムシーケンスを実施しB47-9株のゲノム情報を取得した。ゲノム情報の取得は、PCLE発現株でのみ強く転写されているmRNAの選抜にかかる時間の短縮に貢献し、他の類縁菌のゲノム情報との比較によってPCLE発現メカニズムをより詳細に解析できるため、大きな意義がある。 次に、PCLE遺伝子上流DNA配列内に存在すると考えられる転写制御因子結合配列を特定するため、それぞれ約200bpの断片となるように、4組のプライマーを設計した。設計の際にはPCLEと類似した遺伝子であるクチナーゼ遺伝子の転写因子結合配列の報告なども参考にした。今後、これらの増幅断片を用いたゲルシフトアッセイでPCLE遺伝子上流に結合するDNA結合タンパク質を取得し、生プラ分解酵素発現に関与する転写調節因子の候補とする。 以上のように、本年度実施した研究で得られた成果は次年度への研究につながる重要な足掛かりとなる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まだ培養法の確立していない糸状菌を用いた酵素生産において、従来の前培養条件を検討して培養日数や労力を軽減することに成功し、酵素発現誘導時期を決定するなど、当初の計画通りの成果が得られた。また、次世代シーケンサーを用いてゲノムシーケンスを行い、B47-9株をゲノムレベルで解析することが可能となった。このことにより、生分解性プラスチック分解酵素の発現誘導に関わる遺伝子のクローニングに要する時間が飛躍的に短縮できると考えられる。よって研究はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、PCLE発現菌体からRNA抽出を行い、RT-PCRを用いてより詳細な発現時期の確認を行う予定である。さらに、PCLE発現菌体の核タンパク質からPCLE遺伝子上流に結合するタンパク質を取得する。本年度、次世代シーケンサー利用について、技術習得のため、ゲノムシーケンスを実施することができた。次は次世代シーケンサーを利用した解析方法としては、RNA-seqによるトランスクリプトームを試みる。また、現在誘導物質であることが分かっている炭素源、乳化した生プラ(PBSAエマルジョン)を用いてJar培養条件を検討する。今後、候補炭素源での培養を行う際、生産性の比較を行うためである。
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