研究課題/領域番号 |
13J40169
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研究機関 | 独立行政法人農業環境技術研究所 |
研究代表者 |
山下(鮫島) 結香 独立行政法人農業環境技術研究所, 生物生態機能研究領域, 特別研究員(RPD)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 生分解性プラスチック分解酵素 / 発現解析 / 酵素生産 / 葉面常在糸状菌 / RNA-seq |
研究実績の概要 |
農作業の省力化や環境問題解決のために、農業用マルチフィルム(マルチ)をポリエチレン製マルチから回収・廃棄が不要な生分解性プラスチック(生プラ)製マルチに換えることが進められている。しかし、生プラ製マルチの分解速度は環境中の微生物の働きに依存するため、現状では利用しにくい。そこで、微生物が生産する生プラ分解酵素を利用して、意図した時期に生プラ製マルチを分解させる技術が研究されている。 本研究では、葉面糸状菌B47-9株が培地中に分泌する生プラ分解酵素(PCLE)を実用生産することを最終目標としている。そのためには、現在誘導基質として用いている乳化した生プラ(PBSAエマルジョン)から、より安価で安定して供給でき、かつ大量にPCLEを生産させうる誘導物質の探索が必要である。そこで、PCLE誘導の指標となる遺伝子を特定することを目的として、PBSAエマルジョンによるPCLE発現誘導時に発現が変動する遺伝子の探索を行うこととした。本年度はRNAレベルでの解析を行い、PCLEの発現が最も高くなる時期を明らかにした。 まず、1年次に確立した培養法で培養した菌体から、効率的で質の良いRNAを得るための抽出方法を検討、決定した。このRNAを用いて定量PCRを行い、本培養開始2日目にはPCLE mRNA量が最も多くなることを明らかにした。さらに、本培養開始2時間後、1日後、2日後の菌体から抽出したmRNAを用いて次世代シーケンサーによるRNA-seqを実施し、各サンプルで発現しているmRNAデータを得た。今後、1年次に取得したゲノムシーケンスデータも加えてデータを比較、解析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
菌体から良質なRNAを効率よく得る抽出法を決定することができ、得られたRNAを用いて定量PCRを行った結果、目的の酵素遺伝子のmRNAが高発現する時期を特定するなどの成果が得られたため。また、次世代シーケンサーを用いてRNAシーケンスを実施し、シーケンスデータを取得することができた。これは、次年度に実施する予定のRNAシーケンスデータの比較・解析につながるため、本研究課題はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
次世代シーケンサーを用いたRNA-seqを実施することができたため、解析のスピード、正確性とも大きく向上した。今後は、経時的に回収した各サンプルのmRNAから得られたシーケンスデータを比較・解析し、PCLE発現誘導前に比べてmRNA転写量が増大している遺伝子に絞って、代謝経路に関与する遺伝子を中心に約10遺伝子を選び、定量RT-PCRで転写の増大を確認して、候補遺伝子とする。 また、PCLE発現に伴って転写が増大する遺伝子には、PCLE遺伝子と転写制御因子を共有しているものがあると考えられる。そこで直接PCLE発現に関与する転写調節因子(タンパク質)を探索するため、PCLE発現株から抽出したタンパク質溶液とPCLE遺伝子上流配列の増幅DNAを結合させた担体を混合してDNA結合タンパク質を選抜し、PCLE発現に関与する転写調節因子の候補とする予定である。 さらに、上記の手順で得られた代謝関連遺伝子や転写調節因子が制御する遺伝子が基質とする炭素源を誘導物質としてPCLE生産が可能かどうかフラスコおよび5L培養装置を用いて検討する。また、引き続き培地組成や誘導物質添加時期といった培養条件の最適化を行い、PCLEを短時間で高生産できる条件を探索していく予定である。
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