研究課題
農作業の省力化や環境問題解決のために、農業用マルチフィルム(マルチ)をポリエチレン製マルチから回収・廃棄が不要な生分解性プラスチック(生プラ)製マルチに換えることが進められている。しかし、生プラ製マルチの分解速度は環境中の微生物の働きに依存するため、現状では使いにくい。そこで、微生物が生産する生プラ分解酵素を利用して、意図した時期に生プラ製マルチを分解させる技術が研究されている。本研究では、葉面糸状菌B47-9株(野生株)において生プラ分解酵素(PCLE)を安定かつ大量に生産させるために、PBSAエマルジョンによるPCLE発現誘導の指標となる遺伝子を特定することを目的とした。主にRNAシーケンスデータの解析を行い、PCLE発現誘導に伴って発現が大きく変動する遺伝子の選抜を行った。具体的には、初年度に取得したB47-9株のゲノムシーケンスデータのアノテーションを行い、DDBJへのゲノム情報登録を行った(論文執筆中)。さらに、決定した遺伝子データと、培養中に経時的に抽出したRNAを用いたRNAシーケンス解析結果から、PCLE発現誘導前後で変動が大きかった遺伝子を選抜した。結果、PCLE遺伝子は培養2日後に強く転写されていることが示され、それに続いてPCLEの類似遺伝子(PCLE2 gene)であると予測される遺伝子の転写も著しく増大することが明らかとなった。さらに、発現量も高く、変動の割合も高い機能未知遺伝子も5遺伝子以上存在していた。一方、いったんPCLE mRNAの転写量が減少する1日後では、窒素取り込み、硝酸呼吸系に関連する遺伝子が強く転写されていることが示唆された。今後は、選抜した遺伝子の発現の変化をより詳細に解析し、破壊株の作成などを試み、PCLEの安定生産に向けた研究を続けていく予定である。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件)
Journal of Oleo Science
巻: 65 ページ: 257-262
10.5650/jos.ess15207
Japan Agricultural Research Quarterly
巻: 50 ページ: 229-234