研究課題
平成26年度は、既存の自己制御研究の知見の整理が行われた。これまでの研究では、意識的過程あるいは無意識的過程は独立して扱われることが多く、それぞれが自己制御に果たす役割も個別に検討されてきている。しかし、自己制御における意識的過程と無意識的過程は本質的に協働しており、また、どちらか一方を締め出すことは現実的ではない。本研究では、意識と無意識の協働を想定した研究レビューを行った。また、実証研究のための刺激材料の選定、実験操作の構成、測定課題の開発、および基礎データの収集が行われた。日常的な自己制御における存在目標、行為目標、行動の階層のそれぞれに対応した、意識的な基準設定に関する予備データの収集が試みられた。日常の自己制御における意識的過程と無意識的過程の関係を検討するために、チョイス・オーバーロード・パラダイムを用いた実験結果の日米比較が行われた。これは、意思決定における意識的な熟慮過程の弊害を実証的に示し、また、その文化差を規定する要因を明らかにしようとするものである。その結果、西洋文化圏においては、選択肢が増えるほど決定の満足、効力感、プラシーボ効果などが高まる一方で、東洋文化圏においては、多すぎる選択肢は決定の満足、効力感、プラシーボ効果を低下させることが示唆された。 自己制御の発達の過程を検討するために、母子を対象とした質問紙調査および面接調査が行われた。1歳児から5歳児およびその母親の日常における自己制御場面に関するデータが収集された。このデータに基づき、自己制御における無意識的過程が発達段階ごとに獲得されていく過程が確認された。その中でも、幼児における学習場面に関して、当事者が特定の行為を楽しいと感じるほど、自己制御における無意識的過程が獲得されやすいことなど、これまでの想定とは異なる、本研究のモデル構築において重要な発見となるいくつかの特徴が見出された。
1: 当初の計画以上に進展している
特別研究員1年目の25年6月より26年7月まで、第二子の出産による研究休止に入っていたが、その間も前任校の大学における継続的なデータの収集や実験・調査のための準備を着実に進めることができた。とりわけ、先行研究において混乱がみられた知見を新たな枠組みから整理することができた点、また、新たな視点から日常における自己制御をとらえる調査を行うことができた点は幸いであった。本年度は、RPDの初年度であるため、学会発表などの業績が少なく、また、刊行予定の論文の多くは審査中ではあるものの、研究成果の一部はJournal of Behavioral Decision Makingに掲載が決定している。
研究の第一段階として、研究で必要となる刺激材料の作成、実験操作の構成や測定機器の開発、および基礎データの収集については概ね計画通りに行うことができたため、今後の研究についても計画通りに推進していくことが予定されている。これまでの実験データをもとに、自己制御における意識と無意識の協働に関する実験を、各国で追試するための準備を進める。なお、共同研究者の都合により、実施時期は前後する可能性がある。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) 図書 (1件)
Journal of Behavioral Decision Making
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1002/bdm.1868