研究課題
1)自己制御の文化比較 日常の自己制御における無意識と意識の関係を検討するために実験結果の日米文化比較が行われた。この研究は、意思決定における意識的な熟慮過程の弊害を実証的に示し、また、その文化差をみるものであった。無意識に行われる判断が多分に環境の影響を受けており、自己制御の意識的統制は限定的であることが示された。2)自己制御の発達に関する調査 自己制御の発達の過程を検討するために、前年度に引き続き、母子の質問紙調査および聞き取り面接が行われた。この研究では、「どのような人間でありたいか」という抽象的な視点から目標を捉えるBeing goalと、「何をしたいか」という具体的な視点から目標を捉えるDoing goalという階層の異なる2つの目標を新たに提案し、検討することが目的であった。未就学児の母親180名を対象とした。目標の抽象度が高いBeing goal群においては、目標遂行における困難度の得点が高いほど、目標遂行に対する満足度の得点が高かった。一方で、Doing goal群においては、目標遂行における困難度の得点が高いほど、目標遂行に対する満足度の得点が低かった。3)上位信念の変化がもたらす自己制御の変容 自己制御の階層モデルに基づけば、行為目標や一次的な自己制御における無意識的過程の働きは意識的な統制に左右されない特徴を持つが、存在目標や二次的な自己制御における無意識的過程の働きに関してはその限りではないと考えられる。今年度はこの検証のために、大学生を対象とした調査が行われた。目標の抽象度が高いBeing goal群においては、目標遂行における困難度の得点が高いほど、目標遂行に対する満足度の得点が高かった。一方で、Doing goal群においては、困難度の得点が高いほど満足度の得点が低かった。
2: おおむね順調に進展している
研究2年目となる本年度は、前年度までに得られた実験データに基づき、自己制御における意識と無意識の協働に関する調査が引き続き実施された。自己制御の階層モデルに基づけば、行為目標や一次的な自己制御における無意識的過程の働きは、意識的な統制に左右されない特徴を持つが、存在目標や二次的な自己制御における無意識的過程の働きに関しては、その限りではないと考えられる。本年度はこの仮説を検証するための調査が行われた。自己制御の発達の過程を検討するために、前年度に引き続き、母子の質問紙調査および聞き取り面接が継続された。また、自己制御の変容課程を検討するために、大学生を対象とした調査が実施された。さらに、自己制御の文化依存性を検証するための国際比較研究が行われた。
自己制御の発達過程、変容課程、文化比較については、計画されていた通りに、研究に必要となる手続きを整えることができた。今後は、これまでに得られたデータの分析を進めるともに、これらの研究を発展させた研究の実施が計画されている。自己制御の発達過程に関しては、これまでに構築した母子を対象とした調査および聞き取り面接のパラダイムを踏襲し、目標の階層性について更なる検討を行う。自己制御の変容課程については、大学生を対象とした調査を実施することで、目標の抽象度が自己制御の変容の調整因である可能性を検証する。文化比較については、社会的な刺激に対する反応には、文化固有の成分と通文化的な成分両側面が含まれている可能性を検証するための国際比較研究を行う。また、その成果を反映させたモデルの精緻化を行うとともに、研究から得られた知見を国内外の学会、研究会、学術雑誌などに幅広く公表する準備を進めていくことが計画されている。
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