研究課題/領域番号 |
13J40192
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研究機関 | 独立行政法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
土原 和子 独立行政法人森林総合研究所, 野生動物研究領域, 特別研究員(RPD)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | タンニン / 結合タンパク質 / 無毒化 / 森林性齧歯類 / 質量分析 |
研究実績の概要 |
・アカネズミ(盛岡産)とアカネズミ(静岡産)の唾液からタンパク質を抽出し、2つのタンパク質を電気泳動法により分画した。昨年よりさらに、詳細にSDS-PAGEで分画して解析したところ、盛岡産では3バンド、静岡産では5バンド確認でき、産地によってバンドパターンが異なることが確認できた。それぞれの分画からタンパク質を抽出し、タンニンとの結合能を測定した結果、盛岡産(30 kD)1種と、静岡産の26-28 kDのバンド2種にタンニンとの結合能力が確認できた。産地によって翻訳されるタンパク質が異なるという興味深い結果となった。また、それぞれの残りの25kD以下の2種類のバンドについて解析をおこなったところ、産地による差はないが2種類ともタンニン結合タンパク質ではなく、新規のタンパク質であることがわかった。 アカネズミ(静岡)においては、30kDあたりに3種類のバンドを確認することができたが、そのうちの2バンドは、マウスProline Rich Proteins (PRPs)11と相動性があり、同じタンパク質であることがわかった。おそらく、翻訳後修飾により、分子量が異なると考えられる。
・アカネズミ(盛岡)の唾液に含まれるタンパク質において、二次元電気泳動をおこない、タンパク質の検出をおこなった。タンパク質のスポットは334種類検出できたが、タンニン結合タンパク質はpIが10.5近くとかなりアルカリ性であることがわかった。また、草食性のハタネズミと比較したところ、ほとんどのスポットが重ならず、等電点や分子量が顕著にシフトしいることが確認できた。翻訳後修飾も含めて解析する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アカネズミにおいては、アミノ酸シークセンスおよび質量分析(MALDI-TOF-MS)により、部分構造を決定し、データベース検索から、候補タンパク質を同定することができた。昨年度残した課題は、無事に解決することができた。 また、機能解析をおこなうための結合実験も安定して測定できるようになったため、タンニンと結合タンパク質における機能解析の実験系も確立できたといえる。
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今後の研究の推進方策 |
アカネズミ以外の森林齧歯類の候補タンパク質においても、検出および機能解析がすすみ、生活様式(どのような餌を食べているか等)と候補タンパク質の含有量との相関も解析できたため、今年度の目標をほぼ達成できたため、来年度、予定どおり実験をすすめることができると考えている。 来年度は、予定していた種において、一次構造を完全に確定し、得られた遺伝子配列およびアミノ酸配列をもとに分子系統樹を作成する。そして、分子系統樹から、進化経路・速度等の推定をおこない、餌とネズミとの共進化の解明をめざす。
本研究で得られた成果をとりまとめ、タンニン結合タンパク質の役割および野ネズミ類の生体内における無毒化機構の解明を考察する。
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