研究課題
本研究では、第二言語コミュニケーション能力に関与する脳内の神経基盤の解明とその長期的発達に関与するメカニズムを解明することを目的としている。平成26年度は言語産出に関与する脳内メカニズムを測定するために、英語を習得している日本人大学生を対象とし,短い動画を見ながら動画の人に声をかけるコミュニケーション課題と,その人が何をしているかを単純に記述する描写課題を行う際に,脳の中ではどのような違いがあるのかを調べた。さらに、被験者にはコミュニケーションしようとする意欲と第二言語を使用することに対する不安の度合いを測定する質問紙を行い、被験者の個人差と脳活動分析に用いた。その結果、コミュニケーション活動には状況を読み取るのに関与する社会認知領域がより活動し、更に,英語でコミュニケーションしようとした時は,目的や意図がある発話の計画に関与する左の下頭頂小葉の一部が特異的に必要とされることが分かった。さらに、英語でコミュニケーション課題を行う際には,不安が高ければ高いほど,自分の発話のモニタリングをする眼窩前頭皮質の活動が下がってことが検証された。これらの研究結果は『Neuropsychologia』誌(論文タイトルはNeural correlates of second-language communication and the effect of language anxiety )に2015年出版された。さらに、第二言語コミュニケーションに必要な言語の手続き的知識を測定できるテストを開発し、内容に焦点を当てながら文法処理を行う際の脳活動を測定する一連の実験を行い、実験結果の一部を北米応用言語学会(American Association for Applied Linguistics, 2015年3月)で口頭発表を行った。現在、これまでの実験データの分析や結果をまとめ、27年度から行う長期的コミュニケーション能力を測定する実験で用いる口頭テストの修正を行っている。
2: おおむね順調に進展している
平成26年度4月から1年間、言語コミュニケーション活動の総合的メカニズムを分析するために、言語産出に関するfMRI実験、言語知識を測定するfMRI実験を行った。言語コミュニケーションに関する一連の実験は国際雑誌に発表を行った。また、言語知識を測定した実験の一部も国際学会で発表を行い、27年度に行う予定の長期的コミュニケーション能力の発達を測定するfMRI実験に準備が整いている。さらに、被験者募集などで協力していただく協力校(宮城教育大学)の研究者とも相談が終わっている。現在、実験のプロトコルを準備しており、おおむね順調に進展していると考えられる。
研究計画通りに進行している。現在は、実験のプロトコルの詳細な内容を準備しており、平成27年度5月には長期的コミュニケーション測定に参加する被験者を募集する予定である。その後、7月、8月には実験のプログラムを作成、9月からfMRIを用いた第二言語長期的コミュニケーションに関与する神経基盤の特定を行う。実験結果を考慮しながら、コミュニケーションの教育的介入を検証する次の実験の詳細な実験プロトコルを工夫して準備する。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件)
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