研究概要 |
本研究の目的は、媒質中における中間子の性質を調べることにより、質量の起源の謎の解明を行うことである。様々な中間子の中から、天体核物理への発展の可能性も期待される反K中間子の性質について研究を行った。具体的に、平成25年度は(1)反K中間子と2核子から構成されるKbarNN系に関する研究、(2)K中間子や反K中間子がprobeする原子核密度に関する研究を行った。 KbarNN系測定に関する研究では、J-PARCで実験が行われた(K-, p)反応で生成されるK-pp系をはじめとする反K中間子-NN系の構造計算及び生成スペクトラムの計算を行った。この研究では、おもに実験で得られる生成スペクトラムを求めることを目的とした。カイラルユニタリーモデルに基づく微視的な反K中間子-原子核相互作用を用い、(K-, p)反応で射出される陽子のみならず、最終的に反K中間子が核内に吸収された後に出てくるπ中間子やハイペロンなどを測定した場合の生成スペクトラムを計算した。さらに、生成スペクトラムを射出される粒子対別に系統的に分け, 反K中間子-NN系の実験観測に有利なチャンネルの情報を提供した。一方、重陽子標的の(π, K)反応におけるK-pp系の生成に関して、K-pp系がΛ(1405)-pの束縛状態であると仮定した理論計算を行い、同じ反応における自由なΛ(1405)粒子の生成と比較してどの程度の生成断面積になるのかを見積もった。 また、未だ議論の続く反K中間子と原子核との相互作用の強さの問題に関して、浅い引力を支持する微視的なカイラルユニタリーモデルと深い引力を支持する現象論的モデルとで決定的な違いが出る反応を特定することを目的とし、主に反K中間子原子生成反応および反K中間子と原子核の散乱反応において、反K中間子がprobeする原子核密度を調べた。この研究においては、引力の深い現象論モデルで反K中間子がわずかではあるが、原子核のより内部に束縛される可能性があることを示した。
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