研究課題
本研究の目的は、中間子-原子核束縛系を通して原子核中における中間子の性質を調べることにより、核媒質中での量子色力学の性質、特にカイラル対称性の振舞を理解することである。物質は、主に、カイラル対称性が破れていることにより質量を得ていると考えられており、核媒質中のハドロンの性質を調べることにより質量起源の情報を得ることを目指した。具体的には、天体核物理への発展の可能性も期待されるK-中間子の性質、チャームクォークを含むD中間子の性質について調べる研究を行った。平成26年度は、1.K-中間子が原子核中に深く束縛することによる原子核構造の変化、2.原子軌道に束縛するK-中間子の束縛エネルギーの精密計算、3.D中間子‐原子核束縛状態の生成と構造に関する研究を行った。1.に関しては、トーマスフェルミ近似を用い、最も安定なK-中間子―原子核束縛系全体のエネルギーを求めることで、原子核の密度分布の振舞を評価した。2.に関しては、J-PARCで実験が予定されているK中間子原子のエネルギーと崩壊幅の精密測定実験に先駆け、理論的に精密な束縛状態の計算を行った。特に、クーロン力の補正項を精密に取り扱った。3.に関しては、グリーン関数法を用いてD中間子原子核及びD-中間子―原子核系の生成断面積を評価した。その結果1核子ピックアップ反応では、運動量移行が1 GeV/c程度と非常に大きな値になり、束縛状態を示すピーク構造をクリアに観測することは難しいことがわかった。このように、非常に実験と密接に関連した理論研究を行い、実験研究者と具体的に議論を進めることで、今後予定されている実験に対して非常に有意な情報を与えた。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件)
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