研究分担者 |
近藤 良之 九州大学, 大学院・工学研究院, 教授 (90325499)
野口 博司 九州大学, 大学院・工学研究院, 教授 (80164680)
松岡 三郎 物質材料研究機構, 材料基盤情報ステーション, 副ステーション長(研究職) (10354250)
高井 健一 上智大学, 理工学部, 助教授 (50317509)
栄 中 九州大学, 大学院・工学研究院, 助教授 (00253477)
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研究概要 |
環境・エネルギーの両問題の解決へ向けて水素利用に関する研究開発が世界各国で活発化する中で,安全な水素利用社会実現のために本研究の重要性は益々高まっている.本研究では当初の目的であった高強度鋼のギガサイクル疲労破壊に及ぼす水素の影響に加え,近い将来燃料電池システムへの使用が想定される各種金属材料の疲労強度に及ぼす水素の解明を行った.得られた成果・知見を以下に示す. 1.高強度鋼に水素チャージを施すと,疲労強度・疲労寿命は水素濃度の増加とともに著しく低下した.この原因は基地組織にトラップされた拡散性水素がき裂進展の下限界値ΔK_<th>を低下させるためである. 2.SUS304およびSUS316に水素チャージを施すと,き裂進展寿命が約半分に低下した一方,SUS316Lでは水素チャージによるき裂進展の加速は見られなかった.オーステナイト系ステンレス鋼の水素によるき裂進展の加速には,き裂先端で生じるマルテンサイト変態量が大きく関っている. 3.水素による疲労強度低下の微視的メカニズムを調べるために,中炭素鋼に水素チャージを施して疲労試験を行った.その結果,水素はすべり帯の形成を局在化させることが明らかとなった. 4.水素ガス中では,大気中に比べて摩擦係数が上昇し,フレッティング疲労強度が低下することを明らかにした. 5.超音波疲労試験を利用した介在物検査法を確立し,Al_2O_3介在物及びTiN介在物について妥当な検査結果が得られることを実証した. 6.材料を100MPaの高圧水素環境中に暴露した場合の材料中の水素濃度を再現できる電解水素チャージ条件を見出した.得られた電解チャージ条件を基に,高圧水素環境下での使用が期待されているFCC系合金中の水素存在状態を明らかにした. 7.水素同位体トリチウムを高強度鋼の疲労破面に導入しトリチウムオートラジオグラフィおよびルミノグラフィを行い,破断起点となった非金属介在物周辺にトラップされた水素を可視化することに成功した.
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