研究概要 |
本年度において、4.7テスラ磁気共鳴画像装置の構築は順調に進行し、ほぼ当初の技術目標を達成し、行動サル大脳皮質のBOLD信号取得が可能になった。次の段階として、システム構築の成果を検証する為に、saccade眼球運動の大脳制御機構を解析した。saccade眼球運動制御系は、大脳内に複数の機能中枢を有する分散型制御系であり、サル大脳の電気生理学的解析も進んでいる為、本磁気共鳴画像システムの評価に適した系である。Block型デザインとEvent-related型デザインを組み合わせた実験により、大脳前頭葉および頭頂葉に複数の活性化部位の同定に成功し、saccade方向に対する選択性に基づいて、1.5TMRIシステムで同定されたヒト大脳連合野における活性化部位とのホモロジーを明らかにした(Koyama et al. Neuron 41,795-807,2004)。また、サルに対する課題開発の意味も含めて、ヒトを被験者として従来より解析を進めている注意シフト機構において、explicitなシフトとimplicitなシフトでは脳内メカニズムが異なることを発見し、それぞれの中枢を下前頭溝後部および中前頭回上部に同定した(J.Neurosci.23,7776-7782,2003)。さらに、大脳側頭葉内のTE野と36野における記憶ニューロンの性質・分布の違いをサルを用いて解析し、TE野から36野への前向き情報処理の内容をあきらかにし(J.Neurosci.23,2861-2871,2003)、この前向き情報処理がどのような形態学的基礎に支えられているかについての知見を得た(PNAS100,4257-4262,2003)。前頭葉においては、心に表象・保持されている知覚情報を運動プログラムに変換するプロセス解明の手掛かりを、サルの単一細胞活動解析により得た。大脳運動前野の多くのニューロンが、作業記憶中に保持された位置情報を運動プログラムに変換していることを明かにした(Science301,233-236,2003)。
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